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第7話
あれは、誰だ?
教室へ戻る途中、特別教室が並ぶ廊下に誰かが立っている。まだ昼休憩も半ばで、そいつ以外には誰もいない。なんとなくだが、そいつは俺に用があるように見える。
これは、引き返すべきか。それとも背中を見せてはいけないやつか。
考えが決まらぬうちに声がかかった。
「お前、漣だな。」
「……………はい、そうですけど。」
「ちょっと付いて来い。」
俺の返事を聞かぬ間に背を向けるそいつ。どう考えても悪い結末しか見えないが、俺はついていった。いや、背中から溢れる“来い”というオーラについていく他なかったのだ。
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ついていった先はお決まりの場所。体育館の裏には2人の男がいた。
「そこに立て。」
凄まれるままに壁を背に立つ。俺をここまで連れて来た奴を中心として、男達に囲まれる。
ギラギラとメンチを切る奴。下卑た笑みを浮かべる奴。今にも殴りかかってきそうな奴。ろくな奴がいない。
「お前、安達と付き合ってんだろ。」
………疑問符はどこにいった。
中心の男が確信をもって聞いてくる。当然、甚だしい誤解なので、違うと答えた。次の瞬間、一番怒気を纏っていた奴が、ダンッと俺の顔スレスレの壁を殴った。
「嘘ついてんじゃねーぞ!!」
「本当です。」
「あぁん!!?」
「俺と安達は付き合ってません。」
「嘘つくんじゃねー!!!」
本当だよ。
俺の話を聞く気は無いのだろう、ソイツは苛立たしげに壁を蹴りながらギャーギャー騒いでいる。すると、中心の男が煩いと言いながらソイツを殴った。
殴られたところが痛むのか、大人しくなったソイツ。軽薄そうな奴が、大丈夫かと半笑いで聞いている。それに見向きもせず、中心の男が俺に話しかけてきた。
「本当に付き合ってねーんだな。」
「はい。付き合ってません。」
「そう。なら、俺たちが安達を抱いても君は文句を言わなよね?」
突然ぐるりとこちらを向いたのは、下卑た笑みの男。想像だにしていなかった質問に、軽く頭がパニックになる。
頭の中を男の台詞がぐるぐると回り、必死で理解しようとする俺を見て、ニタニタと笑っている男。どういう思考をしてるんだ。
俺は別に安達と付き合っていない。だから安達が誰とセックスしようが何の文句もない。だがそれとこれとは別じゃ無いのだろうか。
俺が出した答えはこれだ。
「安達が良いなら、良いんじゃないですか?」
すると男は顔に胡散臭い笑顔を貼り付ける。
「じゃあ、今日の放課後、古い方の体育倉庫に来てね。」
さぁ、行くよと二人に声をかけ、男達は去って行った。
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