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第11話
さて、ここからが問題だ。
我が家の玄関を睨むこと数分。いつもなら何の心構えもなく、何も考えることなく扉を開ける。当然だ、ここは俺の家だから。
しかし今日はそうとはいかない。
腕の中で未だに目を開けない安達。先輩三人に代わる代わる犯され、それに体力の限界まで応えていた安達はグッタリとしている。
この状況を見た母は、息子が意識の無い見た目中学生の男を拾ってきた、とは思はないだろう。
中性的で可愛らしい顔立ちのコイツは、俺が抱えていることも作用して、多分女の子だと思われるからだ。
そう、問題は安達から仄かに香る精液の臭いと、どことなく漂う事後のフェロモン。
きっと母は、一瞬驚いた顔をした後口角を上げ、"あんたも男だったのねー!!"と言って安達を彼女だと勘違いしたまま、馴れ初めやら初デートやらと騒ぎ立てる。
「………うわぁ、クソ面倒くさい。」
もう、ここまで頑張ったから諦めようかと考えていると、ガチャリ、扉が開いた。
「…………避妊はちゃんとしなさいね♡」
「…………予想斜め上の解答をありがとう。」
今から買い物に行くのか、手提げを持った母が出てくる。やっぱり女の子だと思っているよう。考えていた反応より上を行く母に、溜息も出ない。
「がっつき過ぎると別れやすいわよー!」
「そもそも付き合って無いから。」
捨て台詞のように叫んだ母は、このまま買い物に行くようだ。なんだか複雑な気持ちだが、家に誰もいないのは好都合。
身体が冷えて震えているうえ、奴らの精液でベタベタしているであろう安達を風呂に入れることにする。
安達をソファに寝かせて、浴槽を軽く洗い、お湯を溜める。あれだけの運動をすれば腹も減るだろうと、冷蔵庫の中を覗き炒飯を作る。
丁度作り終えた頃、風呂が溜まった音が鳴ったのでソファの方へ体を向けた。
「!、……安達。」
振り返るとダイニングテーブル越しに、ぼうっとこちらを見ている安達がいた。
どことなく虚ろな目。
やや廃れた雰囲気。
表情は無いに等しい。
そう、まるで廃人みたいだ。
背筋が寒くなりぶるっと身震いした俺は、恐る恐る安達に近づく。しかし、何も写していないようなその目はやっぱり俺から外れない。それだけのことに安心して、そっと安達の頭に手を置いた。
「おはよう、体痛いとこないか?」
「…………ん。」
「風呂も沸いてるし、ご飯もあるけど、どうする?」
「…………おふろ。」
いつもの饒舌はどこへ消えたのか、ゆっくりと受け答えする安達。あれだけべったりと纏わりついていたのに、今は控えめに俺の服をつまんでいるだけだ。
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