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第2話
俺達の通う青蘭 高校は、成績も部活も、可もなく不可もなしといった男子校で、テストといっても格段に難しいわけではない。
きっちり一週間前から部活動停止期間に入り、テスト初日の前日は短縮授業で午前で終わる。テストの日程は一週間ほどで、最終日のテスト後に授業があるわけでもない。
極々一般的な実施方法のテストである。
だがまぁ、馬鹿というのはどこにでも沸いていて、今日も廊下から馬鹿代表の鳴き声がする。
「助けて〜〜、漣〜!!」
涙やら鼻水やら冷や汗やら、汚い液体に塗れた顔の瀧藤は今回のテストで赤点を取ると留年が決定してしまう程に馬鹿なのだ。
暗記しかできないこの馬鹿は、数学でさえも暗記でどうにかしようとする。勿論、どうにかなる訳もなく、毎回、お慈悲を〜!と泣きついてくる。
「うわ!モンスターが徘徊してるぞ!!」
「漣!お前ちゃんと捕獲しとけよ!」
「………だったら俺に武器を下さい。」
テスト期間に入ると同時に、休み時間はは瀧藤専門の特別授業と化す。
先生と一対一で、数学、化学、物理を勉強し、疲れ果て、モンスターとなり教室へ帰ってくるなり、俺へ愚痴の嵐を吹きかける。
そうして次の授業を寝て過ごす、というこのローテーション。意味が無いと思うのは俺だけなのだろうか……。
普段はクラスの奴らからも人気のある瀧藤だが、テスト期間中はみんなに避けられる。某ゲームのウイルス感染者の様に、近づくことさえしようとしない。
俺も、この状態のコイツに絡まれるのは面倒だから逃げたいのに!!
「もう無理だー!俺には暗記以外無理だー!!」
「まず授業をちゃんと聞こう。それからだって。」
暗記科目以外の授業は全て寝て過ごすコイツ。当然、先生達も怒るのだが、怒鳴られようと叫ばれようと起きないのだ。
「わかった!今日は寝ない!!」
「絶対無理だと思うけど、頑張れ。」
天高く腕を上げ、宣言してから数分後。教室中に大きなイビキが響き渡る。
うん、寝ると思ってたよ。
このクラスの数学担当、橘先生のこめかみにビキビキと青筋が浮かび上がり、怒気を含んだ声で言った。
「………漣、瀧藤のイビキを止めてくれ。」
「えぇ〜〜。」
なんで、俺なんだ。
恨みがましく橘を睨むが、元ヤンだと噂される程の強面に敵うはずもない。仕方なく、触りたくもない野郎の鼻を力一杯つまむ。
「いっだ!!!何すんだよ!!」
「お前、イビキかくのやめてくれない?」
「話聞いてる!!?」
何やらギャーギャー喚いているが、当初の目的は果たせたため、瀧藤を総スルーし、座席に座り前を向いた。
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