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第7話
「んまぁ、健介 君!久しぶりねぇ!!」
「お久しぶりです、晴子 さん!!」
「あら!累 君まで、目の保養だわ~!!」
「そんなぁ~、晴子さんの方が綺麗ですよ!!」
今日は土曜日。約束の勉強会の日だ。
瀧藤と安達は玄関前で母へのゴマすり合戦を繰り広げている。頬に手を当て、くねくねと腰を揺らす母さんを、父さんと二人がかりで止め、二人を俺の部屋まで案内した。
父さんが慣れない手つきで茶を運んできてくれる。ごめんな、父さん。母さんがちびっこ好きなの忘れてたわ。
「晴子さん、変わってないなぁ~。」
「あーうん。ほんと、毎回ごめん。」
良いって良いって!そう言って笑った瀧藤。温かい緑茶を飲み、ひと呼吸した後、やけに剣呑な目で言った。
「おい、漣、安達。お前ら、俺に隠してること、ないか。」
「隠してること…?」
「ギクッ!!!」
「あ!安達、思い当たることあるだろ!!」
瀧藤が安達に詰め寄っているが、何か隠してることなんてあっただろうか…。
「晴子さんも、武人 さんも、安達と初対面じゃなかっただろ。」
「そりゃあ、前に来たことあるし。」
「ちょっ、先輩!!」
ん?なんで焦ってるんだ安達?
「来たこと、あるんだな………!!」
「あれ、瀧藤怒ってる?」
「先輩!契約、契約ですよ!!」
契約って、抱き枕の?
……………………あ、思い出した。学校以外で安達を抱き枕にしちゃいけないんだっけ?
あー確かに、それはバレたらヤバいか。でもまだ家に来たことしかバレてないし、やりようはあるだろ。
完全にビビッてる安達に、目線で大丈夫だと訴える。
「来たことあるぞー、飯食いに。」
「……めし?」
「おー。晩ご飯だけ食べて帰ったぞ。」
「それだけか…?」
「あぁ。お前と約束したから、絶対守るんだって。」
「!!!」
あの日は確か俺が強引に泊まらせた。安達は瀧藤に認めてもらうまで駄目だと言い張っていたが、俺が眠気に抗えなくて…。
だから、安達は悪くない。
「……そうか!ならいっか!!」
「良いんですか!!?」
「約束、守ろうとしてくれたんだろ?」
「っはい!!」
瀧藤は馬鹿だが、こういう時の勘は鋭い。きっとココに安達が泊ったことも、それが不可抗力だったことも、それでも安達は約束を守ろうとしたことも。
本当に、良い奴だよこいつは。
「さ、勉強するか。」
「はい!」
「おう!」
仕方が無いから、馬鹿でも理解できるように根気良く教えてやろうじゃないか。
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