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第9話
「つっかれたぁ~!!」
「お腹空きました~!」
「あー、もう十二時過ぎてるな。」
九時過ぎから初めて約3時間近くぶっ通しで勉強。流石に集中する気力も無い。腹も空いたし、休憩を兼ねて昼ご飯を食べることにする。
食卓へ向かうため階段を下りていると良い匂いがする。昨日、母さんの買い物に付き合った時、えらく沢山買い込んでいたが………。
「こりゃまた豪勢な…。」
「「美味しそう~~!!」」
口の端から涎でも垂らしそうな二人。それを見て母さんが心底嬉しそうに笑っている。俺も父さんもあまり感情的なタイプではない。だからこれだけの反応が見られるのは久しぶりなのだろう。
父さんと母さんは既に食べたらしい。この量を三人で食せるのかどうか、母さんからの挑戦状のように感じるのは俺だけか…?
手を洗っておいでという母さんの声に元気よく返事をした二人を、手洗い場まで連れていく。いつもの喧嘩具合が嘘のように仲良く並んで手を洗い、早く早くと俺を急かしてくる。
どれだけ本能に忠実なんだ…。
「「いっただっきまーす!!!」」
「いただきます。」
「はい、召し上がれ!」
両手を上げてそう言った母さんは、テレビの前のソファで新聞を読む父さんにその心の内をマシンガントーク。………元気でなによりだ。
「美味い!美味い、美味い、美味い、うま~い!!」
「美味し~い!!あれもこれもそれも全部!!」
「分かったから、落ち着いて食べろ。」
机の上に並ぶ和・洋・中の料理を次々と頬張っていく。喉に詰めそうで気が気じゃない。
我が母ながら、中々のお手前。美味しい。けど、
「量が……。」
「そう?俺、まだまだ食べれるよー!」
「………僕はちょっとキツイです。」
瀧藤の胃袋はブラックホールなのか?
食卓に並ぶ残りの料理は瀧藤に任せ、あいた食器を安達と二人で洗っていく。
そういえば、前回安達がここに来たときは、チャーハン作ってやったんだっけ。で、振り返ったらぼーっとした安達がこっち見てたんだな。
「………先輩の後ろ姿、かっこよかったです。」
「ん?」
「初めてこの家に来た時。僕、気を失っていたでしょ?美味しそうな匂いがして起きたら、エプロン着けた先輩の後ろ姿が見えて。」
「あー、うん。それで?」
「かっこよすぎて見惚れてた。」
あの目で!あんなにほの暗い目で!!
もしかしてコイツは、俗に言うヤンデレっていうやつなのだろうか。
「僕はヤンデレじゃないですよ?」
「…えっ、あ、うん。」
ヤンデレ………じゃ、ないんだよな……?
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