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第10話
少し食休みした後、再び俺の部屋へ行き勉強会を再開させる。分からないことがあれば聞く、ということにして各自での勉強になった。
俺も問題集を広げ取り掛かる。しかし、1時間半もすると二人の集中力が切れた。
「…………眠い。」
「もう、ヤダ。」
舟を漕ぐ瀧藤もシャーペンを放り投げた安達も、普段勉強していない奴らがここまで頑張ったのは人生初だろう。
赤点の心配がある教科も無くなったことだし、今日はここらでお開きにするか。
少し疲れた目元を手で覆い、涙が馴染んだころ、ドサっという音が聞こえ手をどける。
「……………。」
「って、瀧藤もう寝てるし。」
赤シートを握ったまま横倒れしたようだ。
………勉強、したかったんだな。
対して安達は、瀧藤が眠ったのをいいことに俺のあぐらへと乗り上げ、ポジションを整えるとガバッと抱き着いてきた。どうしたのかと声をかけると、小さく唸る。
「先輩が足りません。」
一言そう言ったきり無言になった安達が、腹へ頭を当てる。
ぐりぐり。ぐりぐり。
「……安達?」
ぐりぐり。ぐりぐり。
「あ、だ、ち、く~ん?」
ぐりぐり、ぐぐぐぐぐぐぐぐ…!
「痛い痛い痛い痛い!!」
「んむぅ~!!」
「痛いって!」
「ぐぅ~!!」
鳩尾あたりにめり込みそうな頭や、腹回りをグッと引き絞る腕のせいで、中々の激痛だ。唸り声をあげる安達を宥めるように栗色の頭を撫でると、少し力が弱まった。
その細い体の何処にこんな力があるんだろうか。というか、コイツ男だったわ。普段の安達からは男らしさが感じられないしなぁ。
俺が上の空なのが伝わったのか、再び攻撃が始まった。
「いたたたた!!!」
「せ、ん、ぱ、い!」
「分かった、分かった。とりあえず、力抜けって!」
頬を膨らまし拗ねている安達。脇の下に腕を入れ、力尽くで引きあげ、自分の脚へしっかり座らせる。いつの間にかここに安達を座らせることが当然のようになっている。本当に慣れって凄い。
「それで?安達君は何が不満なのかな?」
「………。」
不服そうな安達はだんまりを決め込んでいるようで、俺が話しかけても口を開かない。寧ろ目を合わせようとするとフイッと首を振る始末。
何度か声をかけるがしかめっ面のまま視線も合わさない。
本人に話す気がないならそれでも良いんじゃないか。そう思った俺は、飲み物でも取りに行こうと腰をあげるため、安達を脚から降ろす。途端に目を丸くした安達。一声かけてから動かした方が良かったのだろうか。
今度からは声をかけようと思いながら、立ち上がり、戸を開けようとした瞬間。
強く、左腕を引かれた。
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