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第22話 サリナの生い立ち
講演会は面白かった。興味深いテーマだったから。
『量子物理学の0ポイント・フィールド仮説と
古代インド哲学の「アーカーシャ」との類似と比較』
引きこもりで本ばかり読んでいた僕が前から興味を持っていた事だ。
僕は仏教の考え方に共感している。僕にとって仏教は宗教というより哲学だ。唯識論の阿頼耶識が0ポイントフィールドの場、の考え方ととても似ている、と思う。
この話をするとロジは喜んでくれる。
「ミトの目の付け所は私の持論だ。偶然にしてもミトと出会ったのは奇跡だね。」
たまに、ロジとアカデミックな話をする。
でも、驚いたのはサリナの事。サリナはロジの秘書で仕事を仕切ってるだけか、と思っていたら、元々ロジの大学の学生だったそうだ。
大学院で量子物理学を研究していたという。
ただのセックス好きなタトゥー少女か、と思っていた。彼女の経歴は凄い。
T大で物理学を学び、ロジに師事して院に残った。車の運転も好きでA級ライセンスも持っているという。
ーー30年前、大井埠頭のチキンレース。
埠頭の端までブレーキをかけないで走る。
失敗すればそのまま海に落ちて死ぬ。
結構ディープ。シャレにならない。
普通はそんな危険な事は、冗談で言うだけで実行する奴はいない。
その時も、この頃集会に顔を出す可愛い娘がいるって、みんな集まって来た。凄い改造車に乗ってることも話題になってた。
いつもの土曜日の夜の埠頭の集会。結構有名な暴走族がいくつか集まって来る。
みんな寄ってきてワーワー騒いでいる。話題の女の子が運転席にいるのだ。
派手な箱スカの、しかもアールに乗っている。
スカイラインGTR。シャコタンでオーバーフェンダー、フロントスポイラー、リアウイング、ぶっといタイヤ。
「今時こんなオバケ車、珍しいな。横浜ナンバーだ。生意気だな。おまえ、名前は?」
何も答えない事にみんな苛立ってきた。
「レディースに入れてもらいたいの?
どっか、入ってないと潰されるよ。」
「おい、何とか言えよ。」
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