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第34話 白浜ベース
白浜ベースは九十九里の白浜一帯が、共通のコンセプトで始まった町全体がまとまりのあるカッコいい場所だった。よく見ると異業種が集まって一つのモールのようになっている。
ロックバーとコスプレショップ、図書館カフェ、サーフショップ。キッチンカーが集まったスペースやアニメ制作会社、そして少し離れてレコーディングスタジオがあるらしい。
もちろん地元の名物料理を出す店や、魚屋もある。どちらも老舗だ。
海岸に沿って走るビーチロードも、平行して走る津波対策を兼ねた有料道路の高い土手で遮られて、海は見えない。駐車スペースが海側にあって、観光客のテンションがあがる。有料道路の土手の下にトンネルがあって、白浜ベースにショートカット出来る。一周するのも気持ちのいい散歩コースだ。
「マイバッハだ!」
「スゲェー、マイバッハだ。」
「ベンツ?」
「そう、メルセデス。」
周りにいた観光客が騒いでいる。
車を降りてトンネルをビーチロードの方に戻ると白浜ベースのメインスペースだ。
インフォメーションはないのかと辺りを見回すと「無頼庵」と染め抜かれた暖簾の渋い古民家が目に付いた。
「お店かな。かっこいいな。入ってみる?」
「何屋かわからないが、ブライアン?
聞いたことあるなぁ。懐かしい響きだ。」
ロジが暖簾をくぐるとフレディが出て来た。
「いらっしゃいませ。あら、イケメン。
メイ先生といい勝負ね。」
「フレディ何言ってるの?お客様に失礼よ。」
フレディが女装した男だと、すぐに気がついたロジは、
「知らないで入ってしまったが、ここは何の店かな?お茶でも飲めるといいのだが。」
奥から和服の絶世の美女が出て来て驚く。
「あら、コスプレのお客様ではないわね。
今、お茶をお出ししますから、おかけくださいな。」
テーブル席が用意されている。和菓子と煎茶が出て来て和服の女性が作法通りに入れてくれる。
ミトが緊張している。
奥でミシンの音がしている。
「私の大学時代の友人が、何かバンドをやっていると言うんで来てみたのですが、この辺も凄く変わっちゃいましたねぇ。」
「大学はアメリカ?
もしかしたら五月雨(さみだれ)のお友達かしら?」
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