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第50話 見えないしっぽ
僕がダージリンを入れている間に、ロジがフレンチトーストを作ってくれた。バゲットを厚く切って作るロジのそれはバターの香りが堪らない。
滴り落ちるメープルシロップを口で舐めとってこぼさないように食べてたら
「ミト、やめろ、私を挑発するのは。」
「え?そんなつもりなかったのに。
行儀悪いね、ごめんなさい。」
「ミト、今度は私の口についたのを舐めて。」
ロジの首に抱きついて、口の周りを舐めた。
髭が少し、上唇の上にあって,カッコいいんだ。その周りをペロペロ舐めた。甘い。
「うーん、ロジは顔も素敵だ。顔中舐めてベトベトにしてあげる。」
カッコいい顎髭も舐める。ロジが僕の頭を押さえて強く唇を吸う。
「ダメ、僕が舐めてるのに。」
「我慢出来ない、おいしいミトの唇。
もっと食べさせろ。」
「食事が終わってからね。
はい、あーん。」
ロジの口に小さく切ったトーストを入れる。
「口移しでもいいぞ。」
結局キスに持って行かれた。
後片付けをして二人でソファに座った。
ロジに寄りかかって幸せな時間。終わらない愛撫の時間。ロジの手が僕の身体を触ってるのがいい。安心する。撫で回されて幸せだ。
「よし、出かけよう。」
「白浜ベースに行く?やったー!」
マイバッハで小一時間のドライブ。白浜ベースはいろいろ興味深いお店があるんだけど、あの図書館カフェに行ってみたい。
今日は平日だから空いている。犬が走って来た。
「小次郎、ダメだよ。庭に行きなさい。
あ、いらっしゃいませ。犬、大丈夫ですか?」
小次郎と呼ばれた犬は、チワワみたいだけどちょっと大きくてがっしりしている。可愛い顔だ。
尻尾を振りまくって、でも吠えたりしない。
実は僕は犬が大好きなんだ。
「あ、この前のメイ先生のお友達!」
「こんにちは、もう一人の彼は?」
「厨房にいます。」
この人はサプと呼ばれてた。もう一人は確か亮。可愛いカップル。
小次郎がお腹を見せて転がった。
「小次郎はチワワとペキニーズのミックス犬なんだ。チワワよりデカいでしょ。」
サブが教えてくれた。
「小次郎、僕はミト。よろしくね。」
耳を撫でた。何でもわかるような賢い目をしてる。僕にウィンクしたように見えた。
「ミトが気に入ったみたいだな。
あんなにしっぽ振ってるよ。」
「僕もいつもロジに、しっぽ振りまくってるんだよ。見えないしっぽ。」
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