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第53話 琥珀ちゃん
「ミトはロジャーと仲いいね。」
「うん、他の人を知らない。
恋人になったのはロジだけ。
引きこもりだったから。人見知りだし。
ロジが、世界は広いって教えてくれた。
一緒なら世界は怖くないって。」
「ふーん。
私もメイ先生に救われたの。
気が付いた?
私の手首。リストカットの痕がある。
お風呂上がりだから、包帯巻くの忘れてた。
見えちゃったでしょ。」
琥珀ちゃんの両手には、もう大分古くなったけど深くてしっかり刻まれた傷痕が何本もあった。
「酷いね。自分でやったの?」
「うん、中学から高校辞める頃までずっと傷付けてた。メイ先生は、勲章だよ、って言うけど、馬鹿だよね。一生消えないの。」
みんないろんなものを抱えて生きている。
一人じゃつらすぎるよ。だから愛し合うんだね。
僕はロジがいなければ生きていけない気がする。そんな事を思う気持ちが、強すぎてつらい。
「メイ先生は23才も年上だって言ってたけど、すごいね。」
「よく、結婚したな、って思ってるでしょ?
みんなに言われるもの。」
「ロジだって僕より20才も年上だよ。
オマケに男同士だし。僕の一目惚れだったんだ。
初めは恋愛感情だと気付かなかった。
どうしてキスして欲しいんだろう?ってね。
身体が先に反応した。」
「あ、そういうのわかるよ。
中学の頃、担任のメイ先生は、不気味な変態教師にしか思えなかった。
リストカットの腕をいきなり舐めたんだよ。
青い目であまりにも綺麗な人だし。
高校を辞めた頃再会して、気がついたら好きになってた。」
男も女もない。これが恋なんだ。
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