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第7話

仕事から帰ると、部屋の電気が着いておらず、いつも居るはずのリビングにも誰も居ない ただ、部屋のあちこちにほんのり甘く良い香りが漂ってくる 「雪兎、また我慢させちゃったみたいだな…」 まだ遠慮がちな恋人を早く抱きしめてやりたいが、発情期の始まったΩを驚かせるのは良くないと思い、静かに寝室に向かった 他の部屋よりも一層濃厚な甘い香りについ顔が緩んでしまう ベッドの上で膨らむシーツを愛おしげに抱きしめ、顔を埋めて匂いを胸いっぱいに吸い込む 「ただいま、雪兎。発情期(ヒート)が来ちゃったのか。連絡してくれて良かったのに」 もぞもぞとシーツの中から不安げな表情で顔を覗かせる愛しい人を見て、更に笑みが溢れてしまう 「雪兎のフェロモンで部屋が満たされてる。早く雪兎をいっぱい愛してあげたくなるよ」 フェロモンのコトを言うと、今にも泣き出しそうにクシャリと顔を歪め、頸を押さえている 「ごめんなさい…僕の、フェロモン…臭いから…嫌な思いさせて、ごめんなさい…」 言い方が悪かったせいで、また悲しい顔をさせてしまった 俺には堪らなく良い香りなのに、雪兎は自分の香りを嫌っている フェロモンのコトを話すといつも頸を抑えて謝ってくる 「ごめん、雪兎のフェロモンはすごく甘くて良い香りだから…だから、もっと俺を求めて出していいよ」 雪兎の手を取り、頬や首に口付けをしていく 白く簡単に折れてしまいそうな細い首に噛み付きたくなる 「雪兎、愛してるよ。早く、雪兎を満たしてあげたい」 優しく雪兎の頬や目元に口付けを落とす 不安げな顔で、戸惑いながらもシーツを開いて迎え入れてくれる姿に愛しさが募るも、彼の周りにはシーツ以外何も見当たらず、内心寂しく感じる 今日も、巣は作ってくれてないか... ベッドの周りを見ても、自分の服は一切なく、今回も巣作りはして貰えなかったのだと、寂しさを口に出せずにいた 「雪兎、欲しいモノとかして欲しいことある?雪兎が安心出来るなら、なんでも用意するよ」 ふるふると小さく首を横に振り、不安げに見上げてくる彼に更に寂しさが募る まだ、足りないのだろうか… 一緒に居れない時に発情期(ヒート)になってしまったから… 雪兎のコトを考えていると、服の裾を少しだけ摘まれ 「士郎さんが居てくれたら、何もいらない。ギュッて、して…士郎さんにいっぱい触れて欲しい…」 少し俯きながらも、恥ずかしそうに言う雪兎に愛しさが溢れる 雪兎の発情期は比較的軽めのように見える 抑制剤の影響なのか、雪兎が我慢しているだけなのか… 他のΩよりも比較的軽いんだと思う ただ、一度堰を切ってしまえば淫らに俺を誘惑する いつも何かを我慢している彼が唯一、我儘を口にしてくれる時でもあり、俺がドロドロになるまで甘やかしてやれる時でもある 「雪兎、愛してる」 何度も口内に舌を差し入れ、舌を絡めて溶かしていく 呼吸の合間に何度も「愛してる」と言葉を紡ぐも、その度に不安げな目をしてくる 腕を噛まないように両手をネクタイで縛って拘束し、向かい合わせでゆっくりと蕩けた雪兎のアナルに挿入する 「んぁっ…んんっ…」 挿ってすぐのシコりを何度も擦り上げてやると、気持ちいいのか微かに震えながら声が漏れる 喘ぎ声が微かに出た瞬間、慌てて唇を噛み締めて声を殺そうとする様子に、自分の指を口に入れて唇を噛むのを阻止する 「雪兎、怪我するから、噛むなら俺の指を噛んでいいよ」 何度言っても、声を出すのを我慢する癖が未だに治らない 腕を縛ってやらないと、すぐに腕を噛んでしまう 縛っていても、こうやってまた唇を噛み締めてしまう どれだけ快楽でトロトロに溶かしても、その癖はなかなか治らなかった 「んんっ…ふぁっ…」 ピチャピチャと濡れた音を立てて指を舐める仕草が可愛い 噛み付きたいのに、俺の指だとわかると噛む代わりに舐めたり吸ったりしてくる 「雪兎、いい子だね。声、出していいよ。もっと奥に挿れてもいい?」 返事を聞く前に、ギリギリまで引き抜き、奥まで一気に突き上げる 奥を突く度に、先端から精液が溢れ出す 「んぁっ、あ…あっん…」 奥を突くと簡単に射精してしまい、ビクビクと震えながらしがみついてくる姿が愛おしい 「し、ろ…さん…好き…、もっと…もっと、してぇ…」 先程イッたばかりなのに、腰をモゾモゾと動かし催促してくる恋人に笑みが溢れる 「いくらでも。雪兎が満足するまでいっぱい満たしてあげるよ」 目元の涙を拭うようにキスをし、ベッドに押し倒して何度もナカを突き上げ、室内に可愛い嬌声を響かせる 頸に噛み付きたい衝動を抑え、代わりに首や胸元にたくさんのキスマークを付けていく 「雪兎、愛してる。俺だけの大切な雪兎」 目が覚めると、手首の拘束は外され、身体は綺麗にされていた まだボーっとする頭で彼を探すも見当たらず、発情期のせいで不安が助長されて涙が溢れ出す 「士郎…さん、士郎さん…」 シーツに包まりながら愛しい相手の名前を何度も呼ぶ ガチャッ 寝室の扉が開き、光と共に彼が入ってくる 「雪兎、起きちゃったのか。不安にさせてごめん」 涙が溢れている僕の顔を見て、慌てて抱き締めてくれる 彼の胸に顔を埋め、匂いを胸いっぱいに吸い込んでやっと落ち着く 「士郎さん、好き…ひとりに、しないで…いい子にするから…捨てないで…」 常に拭い去ることの出来ない不安がつい口に出てしまう 彼は僕の頭を優しく撫でながら話しを聞いてくれる 「大丈夫、俺は雪兎の側にずっと居るよ。雪兎が嫌がっても、離さない。雪兎だけを愛しているよ」 子どものように縋り付いて、何度もキスをねだり 「士郎さん…士郎さん…」 彼に触れる度に身体が熱くなり、本能がαを求める 昨晩もいっぱいして貰ったのに、触れていないアナルがまた濡れてくるのがわかる 「んぅ…し、ろ…さん…お願い、します。僕のこと、抱いて…ください」 耳まで真っ赤になりながら、我儘を口にする 「雪兎、いっぱい満たしてあげるよ。雪兎が満足するまで、沢山注いであげるから」 ベッドにゆっくり押し倒され、全身を丁寧に口付けされる 我儘を言って嫌われたくない でも、この人が欲しい… もっと深くで繋がりたい ナカに出して、満たして欲しい… 番でもないのに… 士郎さんの優しさに漬け込んで、今だけは本物の番のように愛してもらう 「士郎さん、好き…ごめん、なさい…好きになって、ごめんなさい」

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