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橘 透愛──第12話*

 一瞬離れて、やわやわと歯を立てられる。 「くち開けて、橘」  言われるがままぼうっと口を開くと、舌先を引きずり出された。  そのままねっとりと、絡められる。 「ん──んぅ」  ぬるぬると口内を行き来する姫宮の舌がほんのりと苦い。さっきまで吸っていた煙草のせいだろう。清涼感が強く比較的刺激も弱いものらしいが、非喫煙者にとってはやはり慣れない味だ。 「は……苦ェ、よ……っ、んん」  けほりと咳き込んでも、また塞がれる。 「は、ふぁ、あ……ん、んぁ……」  ぬるぬると口内を行き来する姫宮の舌が、熱い。くちゅくちゅと舌を絡め合う粘着質な音が、耳の奥に響いて瞼が震え、姫宮の長いまつ毛に引っ掛かった。  至近距離から見つめてくる瞳に、ぞくぞくとうなじが震える。  だんだんと足から力が抜け、ぐいと後ろで支えられた。 「ん……」 「ねえ、橘」  離れていった唇から銀糸が伸び、ふつりと切れて顎に垂れてくる。 「──しようか」 「ひゃっ……や、ばか、ぐりぐり、すんな、……ぁ──う、ぅん……っ」  膝で股の間を突き上げられ、爪先立ちになる。  身長差はあまりないが、悔しいことに姫宮の方が腰の位置が高い。 「辛いんだろう? 僕も君に当てられてキツいんだ……朝からずっとね」  臀部の割れ目にぐりっと硬いものを押し付けられて、かっと頬に熱が溜まる。隠されていた姫宮の中心がしっかりと臨戦態勢になっていたことに、今更気付いた。 「ふ……ちょ、ちょっと、待──わぁっ」  慣れた手つきでベルトを抜き取られ、ズボンの前を寛げられた。 「ほら、もうこんなに濡れてる……これは汗? 違うよね」 「う、うる、せ……、は……ん、」  するりと忍び込んできた手に、芯を持ちつつあった陰茎と、その下のまるい双丘をやわやわと揉みこまれる。  ギリギリで踏ん張っていた理性は簡単にとろけた。ふあぁ……と、バカみたいに甘ったるい声が漏れる。  自分のΩとしての本能の強さ、香りの強さは自覚している。  落ち着かせる方法はただ1つ。番と、交わること。  それだけで体の不調も随分と落ち着く。日常を取り戻せる。幸か不幸か、姫宮の瞳にもしっかり欲が滲んでいるようだ。番である俺の弱いフェロモンの香にあてられたのだろう。  番と密室に2人きりでいればそうなる。  俺だってわかっていたのだ、こうなることは。だから彼を、部屋に入れた。 「一度入れたほうが君も落ち着くとは思うけど、まずは出してしまおうか」 「い、入れるとか出すとか言う、な、ぁ──ひ……ッ」  下を向いている鈴口を、手のひらでくちゅくちゅ扱かれただけできゅうっと内股になり、姫宮の手を逃さないとばかりに腿に挟みこんでしまう。 「ふ、く、ぁあ……ぁ、は、ァ……」 「──キモチイイ?」  ぶんと首を振る。しかし半ケツ状態のみっともない恰好のまま、与えられる快感に腰が揺れる。ぽたぽたと染み出してくる蜜も、正直だ。  これ以上醜態は晒すまいと扉に爪を立てて踏ん張っていると、するすると手首に手が巻き付いてきて、ゆっくりと扉から外された。 「棘が爪に刺さってしまうよ。このまま僕に寄りかかればいい」  前から指を絡められて、手のひらが重なる。そのまま後ろに引っ張られたので、姫宮の肩に後頭部を押し付け、枝垂れかかる。  ここからだと、長くて重そうなまつ毛がじっくりと見えた。 (まつ毛、ばっしばしだな……)  芸能界にスカウトされたことも一度や二度ではないらしい。そりゃそうだろう。  あーあ、子どもの頃は目線もほとんど変わらなかったのにな。14歳ぐらいまではちょっと俺より高いくらいで、顔立ちも美少女そのものだった。  けれどもここ数年で姫宮はずいぶんと背も伸びたし、精悍な顔つきになった。  今では立派な雄だ。  今の姫宮と俺の身長差は5,6cmほどで、俺のおでこが彼の目線に並ぶぐらいだから自然と見上げる格好になる。そこまでの差が、あるわけではないのかもしれない。  けれども俺の成長期は終わってしまったので、これ以上こいつとの身長差が縮まることはなさそうだ。  前髪を梳かれ、するりと汗ばんだ頬を指の背で撫でられる。  その心地よさに目を細めた。 「ひめ、みや……」  今の自分の苦しみを和らげてくれる唯一の人を呼べば、促すように瞼の上を舐められた。  瞬き一つせず、じっと見下ろしてくる視線に思考がとろけていく。 「いいよ橘、イって」 「ぁ……ぁあ……く」  有無を言わさぬ手にたっぷりいじめられて、頂上まであっと言う間に駆け上がる。 「──っ」  目の裏がチカチカとスパークして、ぱたたっと扉に白が散った。粘着質なそれがとろりと垂れていく。

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