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7年前──第21話*
死に物狂いでマットの上を這って逃げようとするも、難なく引きずり戻される。二の腕を掴んできた手を振り払おうにも、簡単にねじ伏せられた。
「ああ、橘。君すごく、いい匂いがする……」
「──ッ」
ざっと血の気が引く。
「あまぁい匂い──美味しそう」
うっとりとした顔で俺の首に鼻を擦り付けてくる姫宮は、もう正気じゃなかった。嫌がっているというのに、強引に服を脱がそうとしてくる。
(やばいだろ、これ……!)
「やっ……だ、やめろ!」
「暴れないで橘、静かにして。もっと君のいい匂い嗅がせてよ……」
「姫宮、ま、て……まって、先生呼んで、ひめ──姫宮ってば!」
「うるさい」
「っ……ぅ」
しつこい抵抗に姫宮もいい加減煩わしくなったのか、あっという間に両手首をひとまめにされて支柱に括りつけられてしまった。拘束具として使われたのは、近くに落ちていた縄跳びだった。
しかも綿ロープなので、プラスチックのように隙間が空かない。
もがけばもがくほど、食い込んできて痛む。
「──やっ、はずせっ、はずせよぉっ、ひぁ……ッ」
服の端を持ち上げられて、そのまま縦に引き裂かれて呼吸が止まった。
(うそ、だろ)
唖然とする。確かに薄い半袖だったけれど、服なんて裂けるはずがないのに。
「はぁ……すごいね、乳首もふわふわだ。きれいな苺色」
慄く俺など見えていないのか、姫宮はぺったんこの胸に顔を近づけてきて。
「うぁっ」
ちゅるんと食まれた。ちゅぱちゅぱと、赤ん坊のように乳首に吸い付いてくる姫宮が信じられない。
「や、なめ、んなぁっ」
「ん……すごく美味しいよ」
美味しいわけがあるか。
「お、おれ、おっぱい、でねぇよ……ッ」
「でもここ、吸ってほしいって言ってるよ?」
「バカ、ちくびがしゃべるかよ……ァ、くぅう、ん」
姫宮がおかしくなってしまった。恐ろしいのに、くりくり舌で粒を転がされるたびせり上がってくる痛みとは違う奇妙な疼きに、爪先がぴんと伸びる。
ふぁ……と、発情期のネコのような声も漏れてしまった。
「ふふ、女の子みたいな声だね。ひくひくしてる、気持ちよかったの?」
「ち、がぁ」
「へえ、これでも?」
「ぁ……ッ」
下腹部に手を押し付けられ、やわやわと揉みこまれて驚愕した。見れば、自身の股が見たことも無いほどに膨らんでいた。
(なんで俺、こんな……)
「まだわからないの? 君、僕におっぱい舐められて興奮してるんだよ」
「ちっ……ちがう、してない!」
「そう、じゃあ中も確認してみようか」
「え──い、いい! いらない! や、やめろ、やっ……わぁあっ」
ジィーとチャックを下ろされ、勢いよくズボンをずり下げられてさらに目をひん剥いた。
「ほら、染みてきてる」
小さな折り畳み傘のように盛り上がっている、ブリーフ。
一番膨らでいる部分からは、じんわりと黒染みが広がっていた。
「うそ……なんで俺、おもらしなんか……」
もう6年生なのにと呟けば、突然唸った姫宮にズボンを剥ぎ取られた。
「うわぁ!」
腿にほっそりとした指が食い込んできて、ぐいっと押し開かされた。その細い腕のどこにそんな力があるのかと思うほどがっちりと固定される。
そこを凝視されるだけでも異様だというのに、あろうことか姫宮はパンツにずぼっと顔を埋めてきた。
「……ッ」
突飛すぎる同級生の奇行に喉が引き攣る。姫宮は硬直している俺に気付いていないのか、それともどうでもいいのか、ぐりぐりと形のいい鼻先を濡れた股間に押し付けてくた。
「お、おま、おまえ、なに、やって」
しかも、すぅー、はぁー……と、大きく息を吸い込む音まで聞こえてくる。
「や──やめろっ、かぐなぁ!」
「すごい、ここが一番君のにおいが濃いな。はぁ……」
くんくんと鼻を鳴らす姫宮が信じられない。さらに信じられないことに、今度はあぐ、とウェストのゴムを噛まれ、そのまま歯でずり下げられた。
「うわぁっ」
ぴるんっと、小ぶりな陰茎が零れる。
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