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お節介な奴ら──第81話

 夏の夕は少し日が長い。  義隆と話し込んで、少し長居してしまった。義隆と別れた頃、まだ空は赤かった。  そんな中、瀬戸から届いた一通のメッセージ。 『はよこい、 みんな集まってんだけどさあ、すごいことになってるから』  意味もわからず急いで飲み屋へと向かって。  来なきゃよかったなと後悔した。  * 「ほら姫宮、こっちも飲め飲めっ」 「ありがとう、ここの焼き鳥美味しいね」 「でもびっくりしたぁ、姫宮くんってこういうとこにも来るんだね」 「うん、大衆酒場ってずっと憧れがあったんだ。でもなかなか一人で行く機会がなくて、今日みんなに声かけてもらってよかったよ」 「だよなぁ、おまえってどっかのクッソ高いホテルの最上階のバーに出没してそうなイメージ」 「あはは! 出没って」 「姫宮くん、これもあるよ」 「こっちもこっちも。唐揚げレモンかける派?」 「ふふ、かけるのもかけないのもどっちも好きだよ」  何がレモンだ。  確かに、だ。ちょっと遅れそうだったから、先に乾杯しててくれと連絡はしていたけれども。 (なんで……なんで姫宮が、 俺の目の前に座ってんだよ!)  しかも綺麗な指でぷちぷち枝豆剥いてるし。  淡麗な容姿の姫宮に枝豆、うん、似合わない。  十数人の飲み会だったのだが、座敷席に上がった時にはほとんどがだいぶ飲んでいた。  未成年のくせに普通に飲んでいるのもどうかと思うが、みんなが楽しそうにしてるので野暮は言わない。  大学生なんてそんなものだ。  それに、繁華街から外れたここら辺の飲み屋はチェーン店でもないので、そこらへんは緩い。  一番の問題は、姫宮が座卓テーブルのド真ん中にしれっと座っていたことだ。  なんでも瀬戸が誘ったらしい。というか、これから飲み会があるんだと説明したら姫宮の方から、「いいな、僕も混ざりたいな」と。  夏祭りの時と同じ状況である。  とにもかくにも、人気者のあの姫宮がこの安っぽい酒場にいるということで現場は大盛り上がりしていた。  俺は素知らぬ顔で周囲からの質問に受け答えする美青年から視線を逸らすべく、 適当に注文したウーロン茶を八つ当たりのごとく飲みまくっていた。  昼間はコーヒー、さっきはメロンクリームソーダ、そして今はお茶、しかも二杯目。  結構胃がたぷたぷだったが、ぐいぐい胃に流し込むことぐらいしかやることがない。  はぁ、とため息を吐く。  最近気分が落ちていたので、皆とワイワイ騒いで気持ちを盛り上げようと思っていたのに。  これじゃあワクワクどころか胃がキリキリである。お茶も飽きてきた……次は梅昆布茶にすっかな。  唐揚げは、ザ・大味って感じで美味いけど。 「ねぇねぇ、恋バナしよっ」 「ねぇ橘、由奈に告られたってマジ?」 「え……ぇえ!? ちょ、ちょ、まてまて、どこで聞いたんだよそれ」  飲んでいたジョッキを落としかけて慌てる。  セーフだった。 「見ればわかるわ、女子なめんな」 「あれから来栖と会ってないくせによ~」  右から左から、甘ったるい酒の匂いを醸し出した女子がぐいぐいくる。  酒に弱いくせに誰よりも飲み散らかす一番顔の赤い瀬戸も来る。 「あー……、その」  ちらりと、テーブルを挟んで向かい側に座る男を伺えば、相変わらず伏せた目で枝豆をむきむきしていた。  枝豆の剥き方もやたらと品がある。  姫宮くん姫宮くんと両サイドの女子に耳元でナイショ話らしきものを打ち明けられて、「そうなの?」なんて目尻を緩めて笑っている。  俺たちの会話なんて、どうでもよさそうだ。  というか楽しそうだ。 (……なんだよ、義隆さんの嘘つき。これのどこが不調だよ、やっぱり全然元気じゃねーか) 「まぁ、な」 「ふーん、で、どうなの? 返事迷ってるの?」 「いわねーし、内緒」 「はーっ!? 教えろよ! 「面白い話題独り占めぇ?」

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