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キレイな人──第167話*

 橘は番の僕以外とはセックスができない。Ω性を持つ彼にとって、番以外との性的接触は身体的苦痛を伴うからだ。  けれどももしも、それすらも超えてしまったら。  身体的苦痛も気にならないほど、橘があの女に惚れていたら……だって僕だったらそうするもの。  たとえ橘を抱くことで発熱しようが気分が悪くなろうが嘔吐しようが、橘に触れられるのであればどんな苦痛だって受け入れられる。耐えられる。  あの女には、そんな覚悟もないくせに。  僕がどれだけ苦労して、橘と接しているか。  本当は、避妊具なんていらない。こんな人工的な薄皮一枚いつだって取っ払ってやりたい。  今だってそうだ。  いっそのこと穴を空けて使用してやろうかとも、いつも考えている。  したことは、ないけれども。   『おまえも、さ。好きなその子と……うまくいくと、いいな』  でも君が、この状態で、へらりと笑って追い打ちをかけてくるのなら。  ねえ、してやろうか、本当に。 「……君に言われずとも、力づくで奪うよ」  今すぐ君の中に種付けして、二度と僕から離れられないような身体にしてやろうか?  惚れた女に愛を告げられ、女性に恋をしている君の薄い腹が膨れるなんてさぞや滑稽な姿だろうな。  想像するだけで嗤えてくる。  周囲の友人やあの女にも、心の底から幻滅されてしまえばいい。  気色悪がられてしまえばいい。  Ωだったんだな、橘。汚い、穢いね透愛って、世界中の笑い者になればいい。  そうすれば橘はもう、恐ろしくて外に出なくなるかな。外を歩けなくなるかな。怖いって、みんなが俺を馬鹿にするんだって、僕に追いすがってくれるようになるかな。  そのうち僕の家で、僕が与えた部屋で、膨みつつあるお腹を撫でて、7年前と同じように窓の外を虚ろに眺めるのかな。  わざわざ手足を枷で繋いで閉じ込めなくたって、自発的に出て行かなくなればそれに越したことはない。  彼の意志なのだから、僕の動向を逐一見張ってくるしつこい橘の兄だって何も言うまい。  言わせやしない。うるさかったらどんな手を使ってでも遠ざける。手段はある。なら、どこに監禁しようかな。日本……ではなく、海外の別荘でも購入するか? どちらのリスクが高いか、久々に天秤にかける。  うん、海外がベストだな。新しく地下室を作るのもいいなぁ、少し前に起きたどこぞの事件で、使えそうな方法があった。あれを応用するか。  窓のない部屋を用意すれば空も見られまい。光も入らなければ人は1週間と持たずに簡単に狂ってくれる。  排泄も管理してやれば、逃げる気力さえ失せるだろう。  首環は……いるな。行動範囲をベッドの周辺のみにしよう。  この男は、どんなに認めたくなくて足掻いたとしてもΩだ。運動を怠れば一気に足腰の筋力も衰えて、一人で歩くこともままならなくなるはずだ。  世話は僕が全てやればいい。シモの世話も、それ以外も。  どうせ、この穴が締まらなくなるぐらい犯すんだから。

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