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透愛と樹李──第197話
「嫌いなところなんて一つもない。腹の立つことはあっても、次の瞬間にはやっぱり好きになってしまうから」
「やっ、やめろよ、やだってばぁ……」
「どうして? 聞いてよ。まだまだ言い足りないんだ。きっと一生、言い尽くせないだろうから」
姫宮の唇から出てくるわ出てくるわ、甘ったるい言葉の数々に腰を引きかける、が、がっちりと固定されているので逃げ場がない。
「毎朝、毎晩、毎秒毎日、四六時中、君のことを考えているんだ。君を見ていると、君に対する愛しさが際限なく膨らむばかりで、どうしたらいいかわからなくて。橘、僕はどうしたらいいんだろう。教えてくれる?」
「もういい! もーいいっ……!」
ううう、と姫宮の肩をぺしぺしと叩く。それでも姫宮は止めてくれない。
「ねぇ、愛おしい、橘……愛らしい橘、僕の……」
「やっ」
「──僕の、透愛」
「……っ、ン」
じゅ、と耳たぶと耳翼のくぼみを啄まれて、肩がぴくんと跳ねる。
「……さっきはね、君があまりにもカッコよくて、惚れ直していたんだ」
「うぅ……」
甘い爆弾攻撃を連続でぶちかまされてへろへろでいると、愛おし気に頬ずりをされた。ちょっと髭が当たって痛い。でもそれが心地よい。
くそぅ、さっきまでベソっかきで泣き虫のガキんちょだったくせに。
俺の私物を盗んで変態行為を働く変態男のくせに。
「ねぇ、抱きしめてもいいかな?」
「……も、言う前に、してんじゃ、ねぇか……」
唇が近づいてくる。
姫宮の丸みを帯びた黒い瞳に吸い込まれそうになった。俺の方が抱きしめてやるとか思っていたのに、姫宮の方が腕が長いせいで、すっかりこいつの懐に閉じ込められてしまった。
避けるなんて選択肢、あるはずもなく……避けたいと、思うはずもなく。
「ン……、む」
あむ、と上唇を柔く噛まれて、軽く引っ張られた。
「キスを、しても?」
「……だから、してんじゃ……ン」
言い切る前に塞がれた。
ちゅく、唇の端から端までを啄まれ、角度を変えては何度か、押し付けられる。姫宮と睫毛が重なるぐらいの至近距離で目を合わせながら、軽く、浅く、時折深く、舌の先をじっとりと絡めるようなそれをしばらく繰り返す。
唇を離されるタイミングで、「橘」と、何度か呼ばれた。
──可愛いって言われているみたいで、腹の奥の奥が疼く。いつも姫宮の先っぽで、ぬちぬちと突いてもらう子宮の口がくぷ……と開閉するのが、自分でもわかる。
「は……ふ」
「とあ」
「っ……ひゃ」
唇の横から零れた涎を、つう、と舌で舐め取られた。生暖かくてぬらついた感触に、姫宮に乗り上げた尻を少し揺らしてしまう。
快楽に慣れた身体なので、これはもはや条件反射だった。
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