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第3話
「まさか圭が首席じゃないとか、驚きだぜ!」
本日の主役達であるせせらぎ学園、高等部の入学生達はブレザーの左胸に赤い花をスタッフから飾られながら、ホールへ入る準備をしていた。
幼稚園、小学校、中学校、高校、大学とエスカレーター式に登り詰めることのできるマンモス校であるこの学園は高等部から内部進学組と外部進学組に分けられる。
かなり優秀で有名なこの進学校は幼等部から高度な授業内容のカリキュラムが組まれていて、上位を占めるのは内部進学組が当たり前だった。
なので、この高等部の首席スピーチはこのせせらぎ学園で幼等部から常に一位を取っていた黒田 圭(くろだ けい)だと誰もが疑っていなかった。
「俺も驚きだよ。どんなガリ勉か見ものだよな」
圭は琥珀色の少し長めの前髪を掻き上げながら皮肉気に笑った。
髪と同じ神秘的な瞳の色を宿した圭はスラリとした高身長に加え、筋肉が程よくついた体格に柔らかく、整った顔立ちをしている。
実家も金持ちで容姿にも恵まれ、頭脳も良く運動もできる。
加えて、第二の性はアルファ。
幼い頃から不自由なく過ごし、自然と一位を取り続けていた。
今回、初めて次席という二番手へと落ちたのだが、別段、悔しくはなかった。しかし、興味はある。
なんてったって、完璧と自他共に認めている自分を越えた者だ。
気にならない訳がない。
「噂じゃ、オメガっつーじゃん。ガリ勉ってことはすげー不細工なのかな?」
圭と幼等部からずっと一緒に過ごしている友人の佐々木 蓮二郎(ささき れんじろう)が茶化すように言った。
「オメガのガリ勉ね〜。不細工なんだろうな」
可哀想にと、圭はほくそ笑んだ。
基本、オメガはアルファ、ベータに比べて基本能力が低い。
優れているのは繁殖機能とアルファを惹き寄せる美しい容姿、そして発情期に放つ独特の香りだ。
この世に数少ないアルファを排出出来る可能性を秘めたレアな生き物だが、価値はそれだけだった。
だが、稀に繁殖機能が弱く、見た目が悪いオメガがいた。それらは偏りはあるものの、とても基本能力が高い者がいた。
ある者はとてつもない頭脳を持ち、またある者はとても運動神経に恵まれていた。
それらは時にアルファをも凌ぐ才能を見せる時があった。
せせらぎ学園きっての秀才と言われた圭から首席を奪ったことで、天海 時雨は内部進学の生徒達から注目を浴びていた。
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