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第5話

「あれが主席?」 「ひょろくてみっともねぇーな!」 「あいつオメガだろ?せせらぎもオメガを主席にするなんて、落ちたよな!」 幾重にも連なる時雨を罵倒する言葉は生徒のみならず、保護者席からも声が上がった。 オメガが壇上に立つなんて恥知らず。オメガが目立つとは何事だと、怒りの声がホール内に響き渡る。 この事態に時雨は勿論、教師側も困惑の色を隠せずにいた。 どんどん大きくなっていく時雨と学園への避難に校長が壇上へ上がろとしたとき、圭が席を立って校長を制した。 「僕が上がります」 人が好む笑顔で圭は言い残すと、ゆっくりと壇上へ階段を上がった。 壇上の上ではパニックに陥る時雨が今にも泣き出しそうに肩を震わせている。 そんな時雨に圭は吸い寄せられるように両手を広げて抱き寄せた。 「っ⁉︎」 「大丈夫。俺に任せて」 時雨の小さな耳へ低く優しい口調で囁くと、圭は時雨を自分の後ろに隠すように前へ立ち、マイクを握った。 『こんにちは。内部進学組の黒田 圭です』 笑顔でただ一言、圭が自己紹介をした途端、会場内が一気に静まり返る。 『皆様、先程から何かと騒がれていますが、彼は主席合格して己の役目であるスピーチをしただけです。それに対して何のご不満があるのでしょうか?』 周りに呼び掛けるように圭は続けた。 『彼がオメガだからですか?それは酷い偏見だと思いませんか?彼の努力が報われなくないですか?』 圭の質問に保護者が再びザワザワと騒ぎ始める。それを制するように圭は強い口調で声を放った。 『公平に生徒を扱えないそんな学校に保護者の皆様は大切な子供を預けるおつもりですか?僕はオメガだからとかアルファだからとか、そんな差別で才能を沈める学校の方が恐ろしくて信用できません。己の努力や実力を認めてくれる学園に入学出来たことを誇るべきです。また、オメガやアルファではなく、天海 時雨の努力と功績を認め、敬うべきだと思います』 今の現状はあり得ないと圭は訴えた。 その訴えに会場内は気まずそうに静まり返った。 それを見た校長がこの状況を収めるように校長を筆頭に学園内の教師達が拍手を送る。 こうして波乱だった入学式を終えた新入生達は保護者達と共に帰宅をした。 時雨と圭を残して………

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