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第7話

「僕、恋人とか番とか作る気ないんです……」 圭の意外と逞しい胸板を両手で突っぱねながら、時雨は震える声でハッキリと告げた。 しかし、そんな返事をものともしない圭は時雨の突っぱねる手を掴んで引き寄せると、華奢な身体を再び抱きしめた。 「んじゃ、これからは前向き検討して付き合おう。とりあえず、俺とお前は恋人。一年後に番になって、卒業と同時に結婚。どう?」 「いやいやいやいや!僕の話、聞いてます⁉︎ってか、なんか、キャラ違うくない⁉︎」 はちゃめちゃな要求の承認を求めてくる圭に時雨は声を張り上げた。同時に入学式で助けてくれたとても紳士なイメージとかけ離れている男に動揺が隠せない。 「式でのこと言ってる?一応、俺も目立つ存在だから、人前ではそこそこ猫被ってるよ。これが俺の素。結構わがままだから、覚悟してね。ってことで、今から時雨の両親へ挨拶に行こうか」 自分本位に事を進めようとする圭に時雨は困惑した。 「あ、あのっ!本当に困ります!迷惑です‼︎」 はっきり言わないと伝わらない相手と認識した時雨は大きな声でキッパリ拒絶した。 「………」 気不味い空気が流れ、時雨は申し訳なさそうに小さな声で繰り返し謝罪する。 「……ごめんなさい」 消え入りそうな声を絞り出した瞬間、時雨は圭に後頭部の髪を鷲掴まれ、無理矢理顔を上げさせられた。 「駄目。無理。許さないし、譲らない。俺、時雨を一目見てあり得ないぐらい惹かれてるんだ」 怒気も含む声音で告げられると、今度は琥珀色の瞳が目の前に広がり、気が付いたときには唇を奪われていて、時雨は硬直していた身体を反射的に動かし、ドンっと圭の胸元を押し、文句を言おうと口を開いた。 だが、そんな時雨よりも先に圭が真摯な口調で時雨との距離を再び縮めるように迫ってきた。 「好きだ。物凄く、好き。絶対後悔させない。絶対に幸せにする。約束するから時雨……、俺のモノになれ」 「こ、困ります!無理です‼︎僕、貴方のこと何も知らないし‼︎」 「俺も時雨のこと知らない。だけど別にいい。これからお互い知っていけばいいから」 「別に僕は貴方のこと知りたいとは思いません!僕は……」 「お前は俺を好きになる。だから、余計なことは考えなくていいから」 傲慢な事ばかりいう圭に怖気付き、圭を自分に近づけまいと必死に時雨は腕を振り回した。 しかし、腕を掴まれた時雨は凄むような威圧感に身体を強張らせる。 石のように固まる身体はカタカタと震えるだけで動くことが出来ない。 こんは状況は初めてで、時雨の頭の中は真っ白になった。 そのとき、二人のやり取りを今まで黙って見ていた校長がパチンっと手を叩いて痛々しいこの緊張を解いた。 「圭君、やめなさい。アルファの力を使うのはフェアではない」

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