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第11話

「趣味に合うか分からんが、わしらからの気持ちを受け取ってくれ」 「そうじゃ、そうじゃ!開けてごらん!」 石塚が嬉々としながら、包装紙が包まれた箱を時雨の手へ握らせた。 「さあさあ、早く!早く!」 「ほ、本当に貰っていいんですか……?」 いきなりのサプライズに恐縮する時雨に老人達は包みを開けることを急かした。 「勿論じゃ!時雨君が貰ってくれんと、ゴミになるぞ」 「時雨君の喜ぶ顔が見たいんじゃ!」 「遠慮はいらんよ」 石塚、花形、柿本が嬉しそうに時雨を見つめた。 孫を愛でるような優しいその眼差しに時雨は嬉しい気持ちと遠慮の気持ちに苛まれる。 そんな心情を察した潮見が時雨の小豆色の柔らかい髪を撫でた。 「ここの年寄り達は皆んな君が好きなんだ。遠慮しなくていい。時雨君がただ喜んでくれるのが嬉しいんだよ」 優しい声で言われ、時雨は胸の奥が温かくなり、鼻の奥がツンとした。 「……ありがとうございます」 小さな声でお礼を告げると、時雨は手の中にある包みを開いた。革で出来た箱を開くと、文字盤がダイヤモンドであしらわれた上品で清楚な腕時計が収まっていた。 「時雨君に似合うと思うんじゃが、好みじゃないかな?」 不安そうな顔で石塚が聞いてきて、時雨はこんな高価な贈り物に驚きながら首を横へ振った。 「す、素敵です!だけど、こんな高価なもの……」 「いいから、いいから!時雨君が使ってくれるならそれでいいんじゃて!」 「そうそう!こっちも開けてくれ!」 時雨の声を遮り、石塚が笑って答えると、今度は花形が大きな箱を渡してくる。 時雨は流されるままその箱のリボンを解いた。 中からはハイブランドのリュックサックが出てきた。 ナイロンで出来きた軽くてシンプルながらもオシャレなリュックサックに時雨は目を瞬かせた。 「せせらぎ学園は鞄が自由と聞いて、コレだと思ったんじゃ!気に入らんか?」 「いえ!使いやすそうで助かります!ありがとうございます!」 まだ鞄を用意できていなかった時雨は素直に喜んだ。そして、続いて柿本が渡してきた箱を開く。 これもまたハイブランド商品で、白いスニーカーだった。登下校で使用して欲しいと言われ、皆んなの実用性のあるプレゼントに時雨は感謝した。 最後に潮見は小さな箱を手渡してきた。 シンプルな白い箱を開くと、そこには最新のスマートフォンがあった。

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