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第12話
「これ……」
「これがあれば何かと連絡が付けやすいだろ?これからは交友関係も増える。使って貰えると嬉しいよ」
潮見に柔らかい笑顔を向けられ、時雨は先程から続く熱くなる目頭に耐えられず、両手で顔を覆って涙を流した。
「………こんなに良くしてもらっても、僕はなにも返せません……」
消え入りそうな声で4人に伝えると、4人は顔を見合わせて大笑いした。
「本当に可愛い子だ!こんなもんで恩を着せるつもりなんてないない!」
「そうじゃ!そうじゃ!わしの孫なんて現金せがんでくるぞ!」
「わしんとこもだ。時雨君ぐらい可愛げがあればな〜」
4人は一斉に身内の貪欲な浅ましさを嘆いた。
そんな4人に時雨は首を左右へ振って訴えた。
「僕は皆さんの孫でもなんでもないんです!今までだって支えて貰ってるのに……」
「うんうん。だから、時雨君は笑ってありがとうって言ってくれればいい。それだけで4人のおいぼれ達は喜ぶんだよ」
時雨の言葉を遮って、潮見は席を立つとプレゼントの包装紙を片付けた。石塚が手際良く時雨に皿と箸を渡すと花形がグラスにジュースを注ぐ。最後に柿本が机の上に頬杖をついて嬉しそうに提案した。
「本物の孫より、時雨君の方が断然可愛いぞ。なんなら、わしら誰かの養子になるかい?」
名案だと手を叩く柿本に石塚を筆頭に老人達は挙手をした。
どこまでも明るく、優しくて朗らかな4人に時雨は段々と可笑しくなって、気がつけば笑っていた。
その笑顔を見た潮見が満足そうな顔で時雨の隣に腰を下ろすと、自身のジュースが入ったグラスを掲げた。
「時雨君、おめでとう!」
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