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第16話

圭の発言に頭の中が真っ白になり、時雨は困惑した顔を向けた。 「ん?どうかした?」 よしよしと頭を撫でられた瞬間すぐさま我に返ると、首を左右へ振り、声を上げる。 「あ、あの!僕、貴方の名前も知らないんですけど!それで、恋人同士とかあり得ません。というより、いつ僕達が恋人同士になったのかも記憶もありません」 はっきり突っぱねるように告げると、圭はキョトンとした顔で時雨を見つめた。 「昨日、番になることも婚約者になることも言ったろ?」 「そのあと僕、断りましたよね!?」 「でも、俺は諦めるのは無理だから時雨が諦めろとも言っただろ?」 忘れたのか?と、驚いた顔で聞いてくるこの男の強烈な自己中っぷりに時雨は面食らいながらも、絞り出すような声で皮肉をいう。 「………校長先生に諭されてましたよね?」 「あぁ。でも結果は変わらない。時雨は俺のものだ」 自信満々に言い切る圭に時雨は辟易した。 何と言って断ればいいのか分らず、目の前の男に嫌悪感を抱いた。 「名前は黒田 圭。圭って呼んでくれ。番になるのは別に今日でもいいし、婚約式もさっさとしよう。天海家へも勿論、挨拶には行くから日程を……」 「僕、困ります!迷惑です‼︎貴方のこと好きになれません‼︎」 自分勝手で無神経、ワンマンにも程があると怒気を孕むように声を荒げて時雨は圭の言葉を遮った。 「………あのさ、昨日も言ったけど、俺の何が不満なんだ?」 腕を組んで、静かな声で聞いてくる男に時雨は眉間に皺を寄せ、尻込みしながらも答えた。 「全てが不満です」 「具体的に言え」 間髪入れず不機嫌な声色で問い詰めるように聞かれ、時雨は再びアルファ特有のオーラを感じ、身体を強張らせた。

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