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第17話

「………僕は貴方が好きじゃないです」 「貴方じゃなくて、圭」 「貴方が嫌なんですっ!」 「圭だっていってるだろ」 勇気を振り絞って言ったのに、要らぬ訂正を挟んでくる男に時雨はムキになって顔を上げ、大きな声で言い返した。しかし、圭は琥珀色の瞳を細め、不愉快だと顔を歪ませ、静かに訂正を求めてきた。 「ぅ……っ…、け、ぃ………」 ビリビリと全身に感じる圧力と相手の折れそうにない精神力に屈し、時雨は男の名前を嫌そうに呟いた。 しかし、極小の声にもかかわらず、名前を呼ばれたことが嬉しかった圭は放っていた圧をスッと引っ込め、時雨を抱き寄せた。 「うん。可愛い!時雨、好きだよ」 圭はちゅっと音を鳴らして小豆色の髪にキスをすると、今度は身をかがめて時雨の顔を覗き込んだ。 眼鏡の奥の瞳が驚きに見開かれる。 「時雨……」 小豆色の澄んだ瞳があまりにも綺麗で圭は気恥ずかしさに視線を少し下へとずらした。 そこには薄く開かれた桜色の唇があり、圭は吸い寄せられるようにその唇に自分の唇を重ねた。 「っ……、ちょっ……ぅんっ!」 驚いて身を離そうとした時雨の身体を押さえ付け、逃げようとする頭の後頭部の髪を鷲掴むと下へと引っ張る。 薄く開いていた口が更に開き、圭は遠慮なく時雨の口内を自身の舌で蹂躙した。 「ぁ………ぅうっ…んっ…」 嫌だと首を捻ろうとするが、ガッチリ押さえ込まれた時雨は目を見開いて視界いっぱいに広がる圭の美貌に動揺する。 舌を吸い上げ、絡めては上顎を撫で上げられ、時雨はぞくぞくと背筋に走る感覚に震えた。 「っん……やっ、はぁ……ぁぅ…」 「飲んで」 口の端から溢れ出る2人分の唾液を飲めと命じてくる圭に時雨は嫌だと強く瞳を閉じた。 抵抗された圭は小さく笑うと、時雨の顔を更に上に上げて自身の唾液を流し込む。 「ぁうぅっ……」 腕の中で小さく震えては泣き出しそうなその姿に嗜虐心が刺激され、圭は時雨の後頭部の髪を思い切り下へと引っ張った。 「あうっ……っ!」 口内の中の唾液が否応なしに喉へと流れてきて、時雨は咽せて咳き込んだ。 「もしかして時雨って、キス初めてだった?」 されるがままで怯えた時雨に圭が目を丸くして聞く。 その問いに時雨は嫌そうに唇を手の甲で拭いながら圭を睨みつけた。 「違います!」

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