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第18話

「流石に初めてではないか。こんなに可愛いもんな……」 残念そうに笑う圭に時雨は攻撃的な瞳を向けた。 「こんな痴漢行為、やめて下さい!」 嫌そうに唇を手の甲で拭いながら告げると、圭は目を丸くして驚いたように時雨を見た。 「………」 「な、なに……?」 無言でまじまじと見つめられ、その視線に戸惑う時雨は身を引きながら警戒する。 「………へぇ〜。本当に俺のこと好きじゃないんだ」 「はぁ?」 心底驚いたと言わんばかりな言動で確認してくる男に素っ頓狂な声を時雨は出した。 そんな時雨を前に圭は小さく頷くと、運転席の男へ命じた。 「今日は学校を休む。ホテルへ向かってくれ」 「かしこまりました」 二つ返事で運転手は答えると、ハンドルを切って行き先を変更した。 学校へ行く道の反対車線へ行かれ、時雨は窓に手を当てて声を上げた。 「ちょっ、ちょっと!待って!困りますっ!学校行って下さい‼︎」 特待生である時雨は成績を落とせない。 金銭的にも時間的にも余裕が無いため、学校の授業をいつも死ぬ気で聞いているのだ。 勝手なことをされては困ると、時雨は圭を睨みつけた。 「戻って下さい!こんなことされたら……」 「学校にはちゃんとこっちから上手くいっておくから大丈夫」 「僕は勉強をしたいんです!」 「時雨って本当に真面目なんだな」 「どうでもいいから、早く学校へ…」 「ん。ちょっと黙ろうか」 「っ……」 圭の柔らかかった笑みがどんどんと機嫌を損ねていくのを感じてはいたが、頑なな自分に限界がきたのだろう。 男の顔は笑顔を保ってはいたが、自分を見据えてくる琥珀色の瞳は鋭く、ゆっくりとアルファ特有のオーラを醸し出してきた。 その威圧にビクッと身を竦め、口を閉ざした時雨は圭を直視できず、視線を伏せた。

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