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第19話

車が停まり、扉が開くと圭は颯爽と車内から降りた。 「時雨」 まるでエスコートでもするように手を差し出し、降りるように促してくる男に躊躇うものの、時雨は圭から放たれる威圧感に怯えて逆らえない。 小さく震える手をそっと伸ばすと、自分よりも大きく骨張った手に握り込まれて。 車から降りて顔を上げると、複数のホテルマンが笑顔でホテル内へと誘うように立ち並んでいた。 「お待ちしておりました。黒田様」 サクマムホテル。 誰もが知る一流ホテルなのだが、圭はよく来るのか、慣れた様子で一人のホテルマンへ手を挙げた。 すると、そのホテルマンがサッと近付いてきて圭へ一枚のカードキーを差し出した。 そのカードキーを受け取ると、圭は時雨の手を引っ張り、真っ直ぐホテルのエントランスへと向かう。 最奥のエレベーターまで進むと最上階のボタン押した。 「………あの、ここに何かあるの?」 どうしてここへ来たのか分からない時雨が怯えた目を向けて聞くと、圭はにっこり笑って答えた。 「時雨のこと一回抱いておこうと思って。体の相性を確認するのもだけど、時雨のこと体から落とすのも有りかなって」 「…………は?」 「オメガなんだし、快感には弱いだろ?ちゃんと満足させてやるから安心しろよ」 「……………」 目の前で自分勝手に好き放題言い放つ男に時雨は絶句した。 他人の体を自由に出来るとどうして思えるのだろう。了承した覚えなんてない。もとい、聞かれてもいない。 「あの………、拒否します」 チンッと最上階にエレベーターが着き、ゆっくりと扉が開いた瞬間、時雨は静かにはっきりと自分の意思を告げた。 「ホテルまで来といて何言ってんの?」 「好きで来たんじゃない!ってか、こんな理由で連れてこられたなんて心外だ!」 文句を言ってエレベーターの一階エントランスへのボタンを押そうとした時雨に圭はその手を掴んで、力尽くでエレベーターから降りさせた。 「オメガのくせになに勿体ぶってんの?発情期じゃないからってお高くとまんなよ」 オメガへの差別的発言に時雨はカッと頭へ血を上らせ、怒声を上げた。 「たとえ発情期でもお前なんてお断りだっ!」

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