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第28話

「あぁ……んぅ、ほ、しぃ……っ…」 理性のタガが外れだし、時雨は両手を広げて圭へと抱きついた。 小豆色の瞳は快楽でとろんとしながら物欲しそうに潤んでいて、男を求めるメスへと堕ちていた。 「あっ……んっ、はやくぅ……もう、いれて……」 自我を完全に飛ばしつつある時雨は焦れたように圭の下半身へ手を伸ばした。 同時に己の甘く芳醇な花の香りをしたフェロモンを意識的に放つ。 部屋全体に充満するくらくらする程の熟れた花の香りに圭のものがドクドクと脈打ちながら怒張する。 「はぁはぁはぁ……、ヤバい、トビそうだ」 欲望のまま時雨を犯しそうな危機感に圭は奥歯をギリギリ噛み締めて耐えた。 「時雨、優しくしたい。だからちょっとフェロモン抑えて……」 「んぅ……、いい。酷くしていいよ?君の好きにして……」 だから早くと急かすように腰を振る時雨へ圭は小さく首を左右へ振り、コツンと額と額を合わせて声を震わせ、頼んだ。 「時雨、俺の名前を呼んでくれ……。俺を意識して。アルファじゃなく、この黒田 圭に抱かれるって意識して欲しい」 男なら誰でもいいようなそんな捨て身な印象を時雨に受けた圭は欲を満たす行為がしたい訳ではないことを告げた。 その想いが伝わったのか、時雨は驚いたように目を見開き身体を強張らせた。 「…………けぃ…」 意味を理解したのかフェロモンを少し抑え、時雨は恥ずかしそうに顔を逸らしながらも、小さな声で圭の名を呼んだ。 「時雨、可愛い…。キスして」 横を向く時雨のこめかみや頬へチュッチュッと音を立てながらキスをし、強請るように圭は舌を出す。 それを横目に見ていた時雨は戸惑いながらもゆっくりと圭と向き合い、薄く開いた唇から少し舌を覗かせた。 その一瞬を待っていたかのように圭は時雨の唇を奪って躊躇いがちな舌を自身の舌で絡め取る。 「時雨……、はぁ、かわいっ………んっ、すき…」 キスに不慣れな時雨が空気を求めて離れていく度に圭は自分の想いを呟いた。 「ぁうっ……んっ、ぁハァ……、くるしっ……ンんっ…」 首を振っても目を閉じても執拗に追いかけてくる圭に時雨 は困惑しながらも確実に快感の中へと誘われていった。

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