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第30話
「ヒィ…、はあ……ぁんぅ、ま、まってぇ…、も、っとゆっくりぃ〜」
上体へ体重をかけるように抱きしめて身体を固定しては狙ったように前立腺を擦り上げながら最奥の壁を捏ねるように突き上げてくる圭に時雨は見た目より大きく逞しい背中へ手を伸ばし、バリバリ引っ掻いたり抱きついたりと必死にもがいた。
「気持ちいい?時雨の中、すっごくうねってる……」
時雨のうなじを舐めるように首筋へ顔を埋め、更に奥を目指して小刻みに腰を揺する圭は甘美なフェロモンの香りと強烈な快感に酔いしれていた。
「アッアッヒィうぅっ……、ふ、かぁいぃ〜…、だめぇ、お、おねがぁ….、一回やめてっ!止まってぇ‼︎」
ビリビリと電流が流れている錯覚に陥る程の強い快感の連続にぶんぶん首を横へ振って拒否する時雨は何度目かの懇願をした。
大きな瞳を細めて涙を流すと、その雫をべろりと舐め取りながら圭は嬉しそうに口元を孤に描いた。
「時雨ってあんまり経験ないよね?奥のとこめっちゃ閉じてるし。怖い?」
圭の質問に時雨は涙を浮かべ、こくこく何度も頷いた。
経験が少ないどころか、これが時雨の初体験だ。
今まで誘われる事、襲われる事は数え切れないほどあったが、それらを全てを躱わしてきた。
家族には見放され、生活に追われるオメガ性を持つ自分を見下し、興味本位で言い寄ってくる輩は多かった。
それら全てを無視して、一人で必死に生きてきたのだ。
月に一度の発情期は薬を飲んで耐え忍び、誰にも心を開くことなく過ごしてきた。なので、もちろん体を明け渡すなんて一生ないと思っていた。
それが突如現れて好きだの惚れたの、番にしろだの結婚してくれと大騒ぎしては口説いてくるこの男に絆されてしまった。
未体験の連続で突発的な意向の末、こんな事態になってしまい時雨は戸惑うばかりだ。
この男の熱い情熱がそうさせたのか、自分の弱さが露見したのか分からない。
ただ情熱に絆されて………
引き返すことの出来ない事態へと足を踏み入れた事実に時雨は翻弄された。
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