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24．溺れるほどに**
「ね、士郎……自分で、脱いで見せて」
ひとしきり首筋、耳朶に噛みついたあと、耳元でそう囁かれて、士郎は閉じていた目を丸く見開いた。
「は？」
「ほら、早く……」
意地悪そうに細められた瞳で口を拭う絢也に、士郎がみるみる顔を赤くした。
「お前、今日はとことんめんどくせえなッ……」
こうなったら聞かない絢也なのを知っていた士郎は、仕方なく、1番上に着ていたパーカ、下に着ていたロンＴ、と脱ぎ、残すは上半身黒のタンクトップ1枚となった。
「それも」
絢也にじっと見られながら脱ぐのはやはり恥ずかしいのか、最後のタンクトップになってから、少しもじもじとする士郎に、追い討ちをかけるように絢也が促す。
ゆっくりと、士郎の肌が露わになっていく様を、絢也は舐めるように見つめた。
見られることに興奮したように、士郎の胸の飾りはすでにきゅっと尖っている。
「見られながら脱ぐの、興奮した？ ……ここ、もうツンツン」
「あ、ひぁッ」
つい、と伸ばした絢也の指に胸の尖りをクリッと摘まれて、士郎がビクンと身を震わせた。
だが、それ以上してこない絢也に、士郎が伏せていた目を上げて、物問いたげな目線を投げる。
「下も」
「 ッ……」
士郎がのろのろと膝立ちになり、かちゃかちゃとベルトを外して、片足ずつ、ジーンズを足から抜いていく。
その股間はすでにふっくらと膨らんでいて、絢也の腰がまたズクンと熱くなった。
下着1枚になった士郎がすがるような目で絢也を見るが、絢也は首を横に振る。
そういう士郎だって、漏らす吐息はすでに熱い。
履き口に手をかけ、士郎がボクサーパンツを下ろしていく。
ふるり、と飛び出た士郎の雄は、もう先端が濡れて光っていた。
「ッ、お前も、脱げよッ……」
士郎が、とさりとベッドに腰を下ろして絢也に言葉を投げつける。
わずかに上擦ったその声音に滲んだ隠しきれない興奮を、絢也は聞き逃さなかった。
絢也は士郎から目を離さず、自分も服を脱いだ。
「ぁ……ッ、ひ、ぁ」
静まりかえったホテルの部屋に、シーツが擦れる音と士郎の微かに色づいた声、そして絢也が士郎の肌を舐る濡れた音だけが響いている。
士郎の胸元に覆い被さるようにのしかかった絢也は、飽くことなく士郎の肌を味わった。
「ゃ、絢也、しつっこい……」
いつもなら、士郎が嫌がるそぶりを見せればすぐに手を止める絢也だが、今日はその制止を聞く気はなかった。
「ッあ！ ッく、あ、やぁッ」
かり、と胸の飾りに歯を立てられて、士郎が身体を跳ねさせる。
散々愛撫されてとっくに熟れていた赤い粒に、一段と強い刺激を加えられ、士郎の雄はまだ触れられてもいないのにすっかり勃ちあがり、とろとろと蜜を零していた。
すでにあちこちに鬱血のあとを散らされた士郎の身体は、起き上がって確認しなくても、もう目も当てられない状態になっているだろうことが明らかだ。
絢也は胸元に舌を這わせたまま、器用に両手を腰へ回し、士郎の尻たぶをやわやわと撫で回す。
そのまま太腿の裏を抱え上げて、腰を密着させた。
「ああ、ッ……あ！ ッや、んんッ」
熱く猛った雄をあらぬ場所に擦り付けられ、士郎は思わず声を上げた。
幹を伝い落ち、奥の窄まりまでを濡らしている士郎の先走りを塗りつけるように動く絢也の雄が、ぬちゃぬちゃと濡れた音を立てる。
「や、絢也の、熱、いッ」
挿入を意識させる、そのいやらしい腰使いに興奮させられるのに、絢也の雄は入り口をぬちぬちと擦るだけで、中へは入ってきてくれない。
もどかしくて、いやいやをするように士郎が首を横に振った。
「それッ、やッ、だ……！」
「入れて欲しくなるから？」
ほくそ笑むように口の端をつり上げた絢也に、士郎が潤んだ瞳でわずかに頷く。
「も、腹ん中、ジンジンして……早く、ここ、して」
肘で上体を支えながら、士郎は抱え上げられた足を自ら開いて、その奥で濡れてヒクつく窄まりを絢也に見せつける。
絢也は、目の前に広がるその卑猥な光景に喉を鳴らした。
同時に、それは羞恥を上回る快楽に士郎が屈した瞬間であり、絢也は血が沸騰しそうなほど興奮していた。
「んんッ……！」
自分の脱ぎ捨てた上着のポケットからローションを取り出して、素早く手に取ると士郎の後孔に塗り込める。
その冷たさに士郎がびくりと身体を揺らし、くぐもった声を上げたが、絢也は構わず指を沈めた。
「士郎のナカ、すっげ、熱いよ……それに、すごい締め付けてくる。わかる？」
「……ぁ、言うなぁッ……ああ、んッ」
「腰振っちゃって、エッロ」
「や、あぁ、ッ」
2本に増やされた指にしゃぶりつくように蠢く内壁がたまらなくて、絢也は手荒くしてしまいそうなのを押さえつけるのに懸命だった。
あくまでゆっくりと、焦らすように。
久しぶりに士郎の泣き顔が見たい、そんな欲求さえ頭をよぎった。
「あ！ ああッ、やあぁ！」
士郎が感じてダメになってしまうそのしこりは、もうふっくりと膨れて、絢也の指を待ち望んでいた。
やわやわと揉みしだくように、ねっとりと触れる。
その度に士郎はあられもない声を上げ、腰をガクガクと震わせるのだ。
いつもなら、何度か往復させてそれでお終いにするのだが、今日は違う。
3本に増やした指でとんとんとリズミカルに触れ、しつこくしつこく刺激するうちに、士郎の声が次第に切羽詰まってきた。
「やだッ、絢也ぁ、それもうやだ、ああッ、も、むりッ」
「だーめ」
口だけは優しく、絢也が言う。
だがその動きは容赦無く士郎を追い詰めた。
「ひぁッ、や、絢也、ッあ、も、ああ、ダメッ」
「いいよ、そのまま、イって……」
「や、あ、も、ダメ、絢也ッ、イくッ、や、イくって、あ、あああッ……！」
きつく瞑った士郎の目尻から、快感の涙が溢れて頬を伝う。
最後はもう意味をなさない声を上げながら、絢也の指をぎゅうぎゅうと締め付けて士郎が白濁を吹き上げた。
ビクビクと余韻に震える士郎の汗ばんだ肌に、指を引き抜いた絢也が口付ける。
その感触に、士郎がまたひくんと跳ねた。
「ぁ……は……」
焦点の合わない士郎の瞳が、ぼんやりと絢也を捉える。
快楽に惚けたその表情が、絢也にはたまらなかった。
士郎の痴態にすでに限界まで張り詰めている自身に、なんとかゴムを装着すると、思い出させるように士郎の太ももに擦り付ける。
「 ッぁ」
その感触に、士郎がビクッと反応した。
そして、その瞳がほのかに熱を帯びるのが分かった。
まだ満たされていない腹の奥が疼くだろうことを承知の上で、絢也が意地悪く問いかける。
「どうする？ 士郎、もう満足？」
「ッく……」
耳まで朱くして口ごもる士郎を翻弄するように、先端でぬちゅぬちゅと入り口を擦る。
「ふぁ、あッ」
中途半端に火をつけられた身体に、その刺激はひどく堪えるはずだ。
「ほら、もっと奥に欲しいって、言って。それ、ちょうだいって。可愛くおねだりできたら、あげる」
「ッてめ、調子乗りやがって、ッん」
文句を言いながらも、士郎の身体は素直に絢也の刺激に反応して、身体の中心では先ほど精を放ったばかりの雄が再び頭をもたげようとしていた。
「ッあ、浅いとこばっか、やだッ」
「うん。それで？」
「ッく……もっと、おく……」
「んー？ 声ちっさすぎて聞こえない」
「もっと奥に入れろっつってんだろ！」
ヤケクソ気味に言い放った士郎が、絢也の腰に長い足を絡めてぐっと引き寄せる。
「可愛くないけど、まあ、合格にしよ、っか！」
「ぁああああッ……！」
ズン、と一気に奥まで突き入れられて、士郎が身体を震わせながらのけぞった。
同時に、士郎の雄からぴゅるっと濁った液体が飛ぶ。
そのままズン、ズンと容赦無く奥を穿つ絢也の動きに、士郎はただただ壊れたように声を上げ続けた。
「ッあぁ、あああ……」
何度目の絶頂かもわからなくなった頃、士郎は掠れた声とともにとうとう意識を手放した。
くた、と横たわった士郎の上から起き上がった絢也は、さすがにやりすぎたかな、と少し反省をした。
だが、後悔はしていない。
もっと、もっと士郎は自分の身体に、心に、溺れればいいのだ。
自分が与えるものが一番心地いいと、幸せだと感じ続けていればいい。
士郎の身体を拭ってやり、そっと布団をかけ、自分もその隣に滑り込む。
他の誰も付け入る隙がないほどに、士郎を甘やかして、溺れさせて。
その愛情でグルグル巻きにして、自分に繋げておきたい。
そんな思いが、絢也の心に浮かんでいた。
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