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第9話・行かなきゃいい⭐︎

「セイ……!」 「ソ……!」  部屋に入るなり、ソーマはドアが閉まるのを待たずにセイの首に腕を絡めた。  言葉ごと飲み込むように唇を合わせると、セイはソーマを抱きしめ返して応えてくる。  セイがドアにソーマの背を押し当てて閉めると、自然と部屋は二人きりの空間になった。  なんども角度を変えて熱い口内を貪り合いながら、セイはソーマのネクタイに手を掛けた。 「ん、ぅ」  解きやすいように胸を僅かに離すと、シュル、といとも簡単に首元が軽くなる。  舌を絡めて呼吸を交換している間も、片手で器用にソーマのボタンは外されていった。 「ぁん……!」  薄い下着の上から温かい手のひらが這う。その指先が胸の突起を掠めると、ソーマの口からあえかな声が上がった。  セイの手は胸から腹部へ、そしてまた胸へとゆっくりと往復する。  ソーマが良い反応を示す場所を微妙に外してくるのはわざとなのだろう。  混ざる唾液を飲み込みながら、ソーマは自ら体を摺り寄せた。  スーツ同士の衣擦れの音が、妙に背徳感を煽る。 「セイっ……ゃ、焦らすな、ぁ!」  唇を離し、大きく息を吸おうとしたソーマの肩が跳ねる。  セイの灰色の長い尾が、ソーマの茶色の丸い尾を撫でたのだ。  紅潮した顔でセイを見ると、セイの濡れた唇を赤い舌が舐める。  その扇情的な動きに意識を奪われていると、その唇が弧を描いた。 「キスしながらだと、声が聞けないのが難点だな」 「ひんっ……」  胸の飾りを摘まれ、引っ張られた。  布の上からでも強く感じる刺激に、耳がピンと張る。 「ぁ、ぁ……」  セイは片手で胸を弄る一方で、スーツの上からでも分かるほど形を成したソーマの中心に触れる。  唇は首筋に吸いつき、尾は臀部周辺を撫でた。  逃げ場のない愛撫を、ソーマはただセイの肩に手をおいて享受するしかない。  ソーマが毎日疲れ果てて帰ってくるため、キスより先の触れ合いは久々だった。  だからだろう。  衣服の上からでも昇り詰めてしまいそうなほどにソーマは張り詰め始める。 「も、だめセイ……! 服が、汚れるからっ」 「洗えばいいよ」 「あ、明日、仕事にぃ、行けなくな……っ、ぁあ!」  爪で胸を強く押されて顎を逸らす。  まだ理性を保たなければならないと思うのに、体を責めてくる快楽の波に押し流されてしまう。 「ゃだ、セイぃっ! むりだ、いっちゃう……!」 「じゃあ、イこうかソーマ」  首を振って耐えるソーマに艶やかな微笑を向ける。  足はガクガクと震えていて、ドアにもたれ掛からなければとっくに床へと崩れ落ちていただろう。 「俺が買ったスーツを着たまま、な」 「んあぁっ!」  首筋の皮膚の薄い部分を痕が付きそうなほど吸い上げられる。それと共に決して薄くはない布地ごと中心を擦り上げられ、ソーマは限界を迎えた。 「ふ、ぁ、……」  余韻に体を痙攣させながら、セイの頭に縋りつく。  セイは首筋の赤くなった箇所に舌を這わせて満足そうな声を出した。 「服を買ったら、脱がすためって言うけど……着たままもいいだろ?」 「ひぅ、んっ……ばか、これじゃ仕事、いけないだろっ」  下着がべっとりと張り付いてくる感覚に青ざめる。  慌ててセイの体を引き剥がすと、スーツにもうっすらとシミが出来ていた。  セイが押さえつけていたのもあるが、忙しさを理由に下半身を蔑ろにしていたことが大きい。  自分で思う以上の量が出ていたのだ。 「行かなきゃいいだろ?」 「またそういうこと言う……! セイのスーツ借りてくからいいよ!」  顔を上げて惚けた表情を見せるセイのネクタイに、ソーマは手を掛けて一気に引き抜いた。 「脱がせてくれるのか?」 「じゃないと、こっちも着れなくなるだろ?」  ソーマはスーツのジャケットに手を掛けると、丁寧に脱がせる。セイは抵抗せず、軽く腕を開いてされるがままになった。  毛長のカーペットに膝を沈めてベルトを外そうとすれば、セイの中心の形がはっきりと分かって手が止まる。 「苦しそうだな」 「お前がそうさせてるんだよ」  ズボンを床に落として下着のみになった下半身に、ソーマは喉を鳴らした。  濃い匂いに鼻を寄せ、熱いソコに口付ける。 「食べたい……」 「せっかくだから、ベッドであげる」 「ん……っ」  嗜めるように耳を撫でられ、ソーマは名残惜しそうに口を離す。欲に潤んだ黒い目でセイを見上げると、同じ熱を孕んだ瞳が見下ろしてきた。

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