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第11話・つい★
「ごちそう、さま」
ソーマはセイの唾液で濡れそぼった蕾に自ら指を入れ、広げて見せた。
すると、セイの緑の瞳がぎらりと獰猛な光を宿したのを、潤んだ黒い瞳は見逃さない。
畳み掛けるようにクチュリと、中の指を回す。
「次は、こっちにくれよ……っ」
誘惑の言葉が終わるか終わらないかの内に、セイはソーマの両腿を掴んで持ち上げた。
ソーマの背中がマットに着地し、わずかに跳ねる。
何も返事をしないまま、セイは中心をソーマの解れた蕾に充てがった。
間違いなく一緒に達したはずなのに、セイの熱は既に硬度を取り戻している。
真っ直ぐにソーマを見下ろすセイは、汗ばんだ前髪を掻き上げた。
「ソーマ、煽りすぎだ」
「え……っ、あああアアアっ」
一気に中に突き入れられたソーマの悲鳴に近い矯声が響き渡る。
中心に強く絡みつき抜き差しを阻む内壁に、セイは眉を顰める。
「きつ……っ、やっぱり久々だから……!」
「ぁっ、体が……喜んで吸い付いてるっ、だけ! あぁ、ん」
ソーマはシーツを握りしめ、懸命に息を逃しながら腰を振る。
その仕草は更にセイを昂らせた。
セイは狭い中を遠慮なく突き上げながら、苦しげな声を出す。
「優しく……っ、するつもりだった、のに……我慢できない……!」
「が、我慢なんて! ……っ、させるか、ぁ!」
ソーマは快楽の涙を滲ませた目で、セイを睨め付けた。
ここ最近、激務で疲れ果てて帰ってくるソーマは、発情をしていなかった。
セイとの触れ合いで気持ちが盛り上がっても、先日のように寝てしまう。休みの日も寝て過ごすことが多くなっていた。
猫獣人の雄はパートナーの発情に合わせて自分も本格的に発情する。しかし、だからといって体を重ねたいと思わないわけではないのだ。
セイにはずっと我慢をさせていたと感じたソーマは、セイの心のままに抱いて欲しかった。
「もっ、もっと! 好きにしてくれ……っ」
頬に触れようと手を伸ばすと、セイはソーマの手を握って顔を近づけてきた。
「ひ、ぁ」
「ソーマ……! 俺はいつも、好きにしてるっ」
「ゃあぁあ!」
両手とも指を絡ませてシーツに縫い付けられる。体勢が変わると奥の部分に届き、ソーマは足の指を丸めた。
「も、おく、きもちぃ……っぁんんっ」
「ここか?」
「そこぉ! ふ、ぁ……は、ぅあ」
「俺も……っ気持ち、いい」
荒々しく息を吐いたセイは肌がぶつかる音がするほどに中を蹂躙していく。
敏感な部分を何度も行き来されて、ソーマは再び限界が近づいてきた。
「セイ、いっしょ、いっしょに……!」
懇願する声に、セイは濡れた目元に舌を這わせて答える。
絡めた手に力を込め、一際強い動きで最奥を貫いた。
「ぁああああっ!」
「……っ」
ソーマが絶頂の声を上げると共に、内壁が大きく蠢く。その刺激に促され、セイは欲望をソーマの体内に放った。
互いの乱れた呼吸音だけが耳に届く。
「ぅ、ぁ」
ソーマは多幸感の中で、焦点の定まらない目をセイに向ける。
「ソーマ」
セイは名前を呼んでソーマに口付けた。
柔らかく温かい触れ合いに、ソーマはふにゃりと力の抜けた笑顔になる。
夢見心地で腕をセイの首に回し、キスを返す。
「しあわせ……けっこ」
「結婚してくれ」
「そう、けっこん……ん? けっこんっ?︎」
「あ、つい本音が……」
驚きがあまりにも大きく、ソーマは現実に引き戻された。
(今、セイが結婚してくれって言った? 俺じゃなくてセイが言った? しかも、ついって言った?)
常々心の中で考えていることを相手から言われてしまい、ソーマは大混乱する。
ポカンと口を開けている恋人に対して、セイは口元を抑えて頷いた。
「うん。俺と、結婚してほしい。本当は、明日の朝に言って驚かせようと思ってたのに……ソーマが可愛すぎて口から出てきたな……」
「じ、充分驚いてます! 本気なのかっ?︎」
受け止めきれずに放った言葉に、セイは拗ねたように唇をへの字に曲げた。
「お前の恋人は、冗談でこんなことをいうやつなのか?」
「絶対、言わない」
「だろ?」
セイは大切な言葉を「つい」で言ってしまうタイプでもないのだが、声に溢れ出るほどの気持ちなのだと思うと嬉しく感じる。
ソーマの茶色の髪を撫で、セイは至近距離で首を傾げた。
「受けてくれるか?」
「セイ……」
今すぐにでも首を縦に振りたい。
いつも、自分もそう考えていたのだとソーマは伝えたかった。
だが、口は意味なく開閉し、どうしても目が泳ぐ。
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