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第12話・雲行きが怪しい

「なにか引っ掛かることがあるなら、正直に言ってくれ」  セイはきちんと話をしようと、体を起こしてベッドの上で胡座をかいた。  同じく重い体を起こしたソーマは、手を引かれるままにセイの膝に座る。  目を合わせられず、視線を落としたまま口を開いた。 「お、俺……セイにやってもらってばっかで、なんか釣り合わない気がして。セイはすごいから、対等になりたいのに」 「うん」  上手く気持ちがまとまらない。  それでも口を挟まず、ただ先を促してくれるのがありがたかった。  ソーマは思いつくままを言葉にしていく。 「今日だって、朝は寝坊したし、俺が行きたいところばっか連れてってもらったし……セイの誕生日なのに」  学生時代から優秀なセイは、友人としても勿体ないくらいだった。  なんとか対等になりたいと思い、理不尽とも思える仕事を頑張っていたのだ。  だが、セイが素晴らしい恋人だと感じれば感じるほど、一向にそうなれる気がしない。 「なんか、申し訳なくて、自信ない……」 「ソーマ」 「ごめんな、嬉しいのに……っ、俺……」  鼻の先がツン、と痛い。  セイはソーマの両頬を手で包み込み、額をコツンと当てた。  その温もりに、ソーマは目頭まで熱くなってくる。  しかし、 「よし、ソーマはまず仕事を辞めよう」 「え゛」  唐突な言葉に、浮かび上がりそうだった涙が引っ込んで変な声を出してしまった。  告げられた言葉を頭の中で反芻する。  セイは、ソーマがなんとかしがみついてきた仕事を、ソーマの最後の砦を捨てろと言う。 「仕事までしなくなったら! 俺なんてただのかわいい兎獣人だぞ!」 「かわいいなら良いだろう」 「良くない!」  自分を揶揄した言葉をそのまま受け取ったらしいセイの肩をソーマは掴み、強く揺らした。  声を荒げてしまうソーマに対しても、セイは余裕の表情で対応してくる。  そして、背中をゆったりと撫でながら諭すような声を出した。 「あのな、ソーマ。俺が今きちんと家事をしているのは、お前が居心地がいいと感じる場所を作るためだけだ」 「うん、いつもありがとう」  痛いほど伝わっていた。  セイはいつもソーマを第一に考えて動いてくれる。 「もしもお前が居てくれなかったら。俺は買い物も料理もせずデリバリーで済ませるし食べるのも面倒になって毎日は食事しない」 「ん?」  ソーマは思わず眉を上げた。  なにか、雲行きが怪しくなってきている。 「掃除機なんてただの置物になって、洗濯物も着る物がなくなってからする」 「洗濯してる間はどうするんだよ!」  突っ込むべきところはそこではない気がしたが、後の祭りだ。

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