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12、本当は

 陽介が教室を出て数十分、俺はまだ教室に残っていた。性格には立てずにいたんだ。  俺が教室を出て行こうとした時、ものすごい強さで陽介は俺の腕を掴んできた。その場所がチクチクしていて、ずっと気になっていた。  ゆっくりとシャツも(まく)り、掴まれたところを見てみると、案の定、痣ができていた。  そして恐れていたことに、俺はその痣に欲情した。身体の内側から、すごい勢いで熱いものが湧き上がってくる。  息ができないほど苦しくして、もっと痕を残して、陽介のものだって印をつけて、俺をいっぱい傷付けてぐちゃぐちゃにして、そうしていっぱい頑張れたらいっぱい甘やかして。そういった底なしの欲がどんどん湧いて出てきた。  そうして俺は自分自身を慰めて、熱を吐き出した。 「んあっ…はぁ…はぁ……はは…」 自分の体内から出た液体を見て、俺は急に冷静になった。そして笑うしかなかった。  俺は陽介が好きだ。だから陽介には普通に人を愛して、素敵なパートナーを見つけて、その人を大切にしてほしい。俺の手の届かない場所で、普通の幸せを見つけて欲しかった。  でもまた陽介に出会って、陽介もあんなに俺のこと好きでいてくれて、そうしたら欲が出た。陽介のパートナーが俺だったらいいのにって。  そうした浅ましい欲のせいで、魔が差した。「パートナーになって欲しい」って言われた時は天にも昇る気持ちだった。陽介がこんな俺を求めてくれたって、嬉しかった。  だけど同時に怖かった。また陽介が父のようになってしまったら、裕人みたいに行き過ぎて捕まってしまったら、そう思ったらやっぱりパートナーを解消した方がいいんじゃないかって思えた。 「陽介は俺に我慢しなくていいって言ってたけど、陽介とパートナーになった時点でスゲー我儘なんだよな」 だってそうだろ。今日の陽介は明らかに変だった。あれは絶対に俺のせいだった。俺のSub(サブ)のフェロモンを嗅いで正気を保つなんて、心身ともにすごい負担がかかってるはずだ。なのに陽介は笑って、俺の近くにいてくれた。そしたらもっと離れられなくなった。  でもいつか、タガが外れて裕人みたいになったら。裕人は俺を責めたけど、陽介はきっと自分を責める。俺を傷つけるって、きっと陽介の方から離れていくんだ。  それは嫌だな。勝手に自分から離れていったくせに、陽介には離れていかないでほしいなんて… 「図々しいな…俺って…」 俺は天を仰ぎながら呟いた。誰もいない部屋で無機質に響く自分の声が、俺の気持ちを代弁しているかのように冷たく責め立ててきた。

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