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1.青空と"さよなら"と(5)

 久しぶりの登校で知ったこと。 「文化祭の出し物って……写真展?」  いくつも黒板に書きだされていた中で、僅差で残ったのが『写真展』だったらしい。 「そんなの写真部でもやるんじゃねーの?」  俺が忌引きでいない間に、うちのクラスの出し物が決まったらしい。 「写真部のは、げーじゅつせーの高いやつ?とかだろうから、うちのクラスのは、面白画像をプリントアウトして、飾ろうって」  ヤスが、自分のスマホの中から、面白そうな写真を探そうとしている。 「ほら、こんなのとか」  そう言って見せてくれたのは、家のソファで居眠りしているお姉さんと猫の画像。  それも猫のほうが、お姉さんの上に乗っかったまま。 「ぷ。カワイイな」 「だろ~!」 「……猫バカだな」 「なんとでも~。で、いくつかピックアップして、いいのがあれば、ポスターサイズにプリントアウトして、天井から下げて仕切りにしたいんだって~」 「……そんなこと、できんの?ずいぶんと具体的だけど」 「むふふ。茜ちゃんのアイデアなのだ」  鼻を膨らませて威張ってみせるヤス。 「ふーん」  いまひとつ、俺にはイメージがわかないけど、盛り上がってる人がいれば、それにつられて、みんなもやる気も出てくるもんだろう。 「要も、なんか自分のスマホの中から、面白そうな画像、探しとけよ?」 「え~。俺のなんか、たいしたのないよ」 「だったら、撮りに行け!」 「どこに?」 「どこにでも!」  そう言ったかと思ったら、こっそり耳打ちしてきた。 「それを理由に、先輩とデートでもしてくれば?」  ヤスがニヤリと笑う。 「っ!?な、何言ってんだよっ!」  真っ赤になりながら、ペチッ、とヤスの頭を叩いた。 「いってぇなぁ。もう、要ちゃんてば、恥ずかしがりやさんなんだからぁ♪」 「ヤスっ!!」  キャー!とか言いながら、逃げ出すヤスを追いかける俺。  昼休みは、ヤスとの追いかけっこのおかげで、あっという間に過ぎて行った。

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