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1.青空と"さよなら"と(8)

* * *  ヤスくんから、要のことをどうにかしろ、と、お叱りのメッセージをもらってしまった。最近、タイミングが合わなくて、ちゃんと要の顔を見てなかったから、ヤスくんに言われて心配になってきた。 「潤、ちょっと要のとこ行ってくる」 「あっそ。嫁は大事にしないとな」 「おー」 「……お前、さらっと言うようになったな」 「……お前のおかげでな」  いってら~、と手を振る潤に見送られ、向かったのは要の教室。覗いてみると、ヤスくんと佐合さんと一緒に、ランチの最中だった。楽しそうに笑っている要の横顔が……ヤスくんが怒るのも無理はないと思うくらい、やつれて見えた。俺はそのまま教室に入ると、要の腕をとって立たせた。 「えっ!?」 「ちょっと来い」 「な、なんですか?」  俺の突然の登場に、一瞬ヤスくんたちも驚いていたけれど、俺が要を教室から連れ出そうとすると、がんばれ~!、と二人ともが応援するように手を振っていた。  掴んだ手首が、思いのほか細い。  ……たった数日なのに、なんで、こんなにやつれてるんだ。  要だったら大丈夫、と、過信してた。 「柊翔さん……痛いです……」 「……」 「あの……」 「黙ってついてこい」  ヤスくんに言われなきゃ気づかなかった俺と、同じ家にいるはずのおじさんに、腹が立って仕方がない。俺たちは、屋上へ続く階段をのぼり切ったところで止まった。ドアは鍵がかかってて、外には出られない。 「はぁ、はぁ、はぁ……」  余裕の俺とは反対に、肩で息をする要。 「し、柊翔さん、もう、手首……いいですよね?」  手を離すと、俺は腕を組みながら、要の目を見つめた。正面から見ると、頬がこけてるように見える。思わず、要の頬に手をあてると、少しだけ、ビクッとする。でも、要は自分の頬を、まるで猫が飼い主にするように、俺の手に擦り寄せてきた。その姿を見ただけで、ドキドキしだす。  やましいことをしたくて、ここまで連れてきたわけじゃないのに、無意識に俺を煽ってくる要。我慢できなくて、要を抱きしめた。 「……やっぱ、お前、痩せたな」 前に抱きしめた時よりも、胸板が薄くなった気がする。 「ごめんよ。俺が、もう少し、気にかけてれば……」 「し、柊翔のせいとかじゃないからっ」 そう言いながらも、要は背中に回した腕を、ギュッと抱きしめた。 「要……今日から、うちに来い」 「……え」 「あの家に一人でいると、ちゃんと食わねぇだろ」 「た、食べてるよ」 「この状況で、それ、まだ言う?」 「……」 「一人で食べるより、マシだろ」 「……うん」  素直に答えたところを見ると、限界だったのかもしれない。頭をポンポンと叩いてやると、要は薄らと涙目になっていた。

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