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1.青空と"さよなら"と(9)

 今日は予備校があったけど、今の要を一人で放っておくことなんてできない。そう思って、母親に要を連れて帰ること、それと今日は予備校は休むことをメールした。予備校は別の日に補習くんでもらおう……そう思いながら、要の教室に向かった。  教室に行くと、ヤスくんと二人で話している姿が目に入った。 「要、帰ろう」 「え?」 「お、お迎えっすか」 「今日は、予備校なんじゃ?」 「ん、でも、要のほうが大事」  真っ赤な顔で俯く要を、ニヤニヤした顔で見てるヤスくん。 「ヤスくんは?佐合さん待ち?」 「はいっ!」 「じゃあ、要はもらってくね~」  そう言うと、要に「さっさとしろ」と言いながら、要の鞄を横取りした。  少し強引だったかな、と思いながら、電車の中で隣に立っている要を見る。要は、外をぼんやりと見つめていた。  何を考えているのだろう。  俺は声をかけずに、手元のテキストに視線を落とす。隣にいるのに、心ここにあらず、という要が、心配になる。顔を向けずに、空いている方の手で、要の手を握ると、ビクッと驚いて俺の方を見た。  でも、お互いに何も言わない。この空気は嫌じゃない。  電車が止まり、ドアが開くと同時に、他の高校の女子たちがなだれ込んできた。  きゃぁきゃぁ、と甲高い声で入ってきて、俺たちは、反対側のドアに並んで立っていたけれど、彼女たちの勢いでつぶされそうな錯覚を覚える。  ドアに背を向けて立った俺は、そのまま、要と繋いでいた手を、背中に隠した。  顔を赤らめてる要を、横に、俺は一人、ニヤニヤしてた。そんな俺をチラチラ見てくる女子たち。  いかん、いかん、と口元を引き締めて、もう一度、テキストのほうに集中しようとしたら。 「あ、あの……」  目の前に、小柄な女の子が立っていた。ツインテールの目がクリクリとした感じの女の子。その子が声をかけてきたのは、俺ではなく……要のほうだった。  俺はそっと手を離す。  要は、自分が声をかけられてるとも思わずに、外を見ているから、 「要」  俺の方から、声をかけた。 「あ、はい?」  要は、俺のほうに顔を向ける。俺は苦笑いしながら、彼女のほうに目線をやると、要は、誰ですか?という表情。 「あ、あの……か、彼女いますかっ?」  電車の中だというのに、大きな声で聞いてきたものだから、俺も要も、驚いた。
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