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1.青空と"さよなら"と(11)
家に着くと、「要くん、要くん」と、母親が一人で盛り上がっていた。これなら大丈夫か、と、俺は一人部屋に戻って、ロンTにジーパンに着替える。リビングに戻ると、甲斐甲斐しく要の世話をやいている母親と、それに圧倒されてる要がいた。
「母さん、ほどほどにしとかないと、要、帰っちゃうかもよ」
俺が呆れて言うと、
「そ、それは、ダメっ!」
そう言いながら、要に抱き付いてるし。それが逆効果だっていうのに。
「要、俺の服でよければ着替えろよ」
「あ、す、すみません」
慌てて、俺の後をついてくる。チラっと見ると、帰りの電車で見た、何を考えているのかわからなかった表情よりも、気持ち、顔が緩んでる気がする。
俺の服を着ても、それほどサイズの違いを感じなくなった。
「……お前、でかくなったのな」
背の高さもあまり変わらないか?
「そりゃ、成長期ですからね」
クスクス笑いながら、目の前に来て見せるから、軽くキスをした。
「っな!?いきなり何をっ!?」
「ここに来て、そのセリフ、おかしいんじゃないか?」
そう言って両手を腰に回して、抱きしめる。やっぱり、腰回りも細い。こんなに華奢だったっけか。
「……ちゃんと飯、食え」
「た、食べてるって言ったじゃないですか」
「……もっと食え」
「ふ、太っちゃいますよっ」
「もっと、太ってもいいと思うけどな」
「何、言ってるんですか。」
要をグッと引き寄せると、耳元で囁いた。
「そのほうが、抱き心地がよさそうだ」
もう一度、唇を重ねる。
要の柔らかい唇を、優しく食 むたびに、甘い吐息が漏れてくる。ゆっくりと、舌を絡め合いながら、服の中の要の背中に手を触れる。それだけで、ビクリと震える要が、愛しくて仕方がなくて、理性が飛びそうになる。
「二人とも、おやつ食べる~?」
……タイミングよくなのか、悪くなのか。
母親の明るい声がリビングのほうから聞こえてきた。唇を重ねたままだった俺たちは、とろんとした目をお互いに交わしながら、苦笑い。名残惜し気に唇を離す。
「どうする?」
「……おばさんに悪いですから」
「そっか……わかった!もうちょっとしたら行く!」
ドア越しに大きな声で返事をすると、その前にもう一度と、要の唇を貪った。
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