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1.青空と"さよなら"と(12)

* * *  柊翔の唇が優しく俺の唇を噛む。逃げ腰の俺の舌を、巻き取っていく。そうやってキスを繰り返していくたびに、心も身体も柊翔を許していく。手で背中を撫でられても、今では、恐怖は感じない。  むしろ……もっと触れて欲しいとすら思う。  ただ、おばさんの声を聞いてから、時間が経ちすぎてしまったんじゃないか、と気になって、俺は柊翔の胸のところを軽く叩いた。ようやく唇が離れていくけれど、唇が寂しく感じてしまう。 「……行かないと」 「……」 「……少し……落ち着いてから……ですけど」  抱きしめあってたから、俺のも柊翔のも少しばかり固くなってきてるのがわかってしまった。それが恥ずかしくて、柊翔から身体を離した。 「……一緒に飯は食えるけど、二人きりになれないのが、俺の家の嫌なとこだな。」  柊翔は、そう言って、ニッと笑った。  リビングに行くとおばさんのにこやかな笑顔に迎えられて、久しぶりに、楽しい時間を過ごせた気がする。家にいると、なんだかマイナスなことばかりが頭に浮かんでしまうから。  親父がいてくれたら、少しは違うのだろうか。  そんなことを、ふと思って見たけれど、あの人がいても、あんまり変わらない気がした。 「何考えてるんだ?」  ちょっとぼーっとしてたのを、柊翔が目ざとく聞いてくる。 「いえ、ちょっと考えごとです」 「なに?」 「……いや……」 「言えよ」 「えと、ちょっと家のことが心配だなって」 「?」  柊翔にはなんでも素直に話したいけれど、おばさんもいる手前、別のことを口走ってしまう。 「親父、あんまり家のことやる人じゃないんで……」 「あら、要くんが、家事やってたの?」 「家事ってほどじゃないですけど……」 「偉いわねぇ。うちの男どもは何もしやしないし」  おばさんに軽く睨まれる柊翔は、知らんぷりして、お菓子をつまんでいる。 「だから、親父だけだと、ひどいことになっちゃいそうなんで」 「要くん、頼りにされてるのね」  ニコッと笑うおばさんの言葉に、素直に頷けない俺がいる。あの人は……俺なんか頼りになんかしてないと思う。 「でも、お前、一人じゃちゃんと食ってないだろ」  ジロリと睨む柊翔。 「だから、そんなことないですって」 「その痩せ方じゃ、信じられない。そう思うだろ?母さん?」 「そうね。ちゃんと食べてるとこ、おばさんも見ておきたいわ。」  真剣な顔で俺の顔を見るから、俺、そんなに痩せてるかなぁ、と両頬に手を当ててみた。
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