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1.青空と"さよなら"と(13)

「あら、やだ。要くんてば、カワイイ!」  きゃぁきゃぁ言うおばさんに、若干ひいてしまった。 「とにかく、毎日、ご飯食べにきなさい。帰るの面倒なら客間でよければ泊まってもらってもいいし。要くんのお父さんには、うちのお父さんから言ってもらうから。ね?」 「え、でも、それは申し訳ないです。」  慌ててそう言っても、おばさんの気持ちは固いみたいで、すでにスマホを取り出して、メールを打つつもり満々。 「あ、さ、さっきも言ったとおり、家のことが心配なんで、毎日ってのは、ちょっと……」 「じゃあさ、俺が予備校のない日はうちに泊まって、そうじゃない日は自分の家に行けば?」 「え?」 「で、お前ひとりの時は、俺が予備校帰りに、お前の家に行くからさ」 ……は? 「何、言ってるの、あんた、受験生なんだから、ちゃんと勉強しなきゃダメでしょ。要くんと一緒じゃ、絶対、遊んじゃうんじゃない」  おばさんも、呆れた顔で言う。俺も、そう思うので、うんうんと頷く。  ……違う意味で、遊びそうだけど。 「この前の模試でも、志望のとこ、A判定だったじゃないか。気を抜かなければ、大丈夫だって」 「スゴイ、柊翔さんって、どこの大学目指してるんですか?」 「ん~、今はK大かな」  さらっと言ったけど、この人、そんなに頭よかったんだ、と、今さら思う。いや、うちはそこそこの進学校ではあったけど、柊翔がそこまで頭のいいイメージがなかった。剣道のイメージが強すぎるせいかもしれない。 「……でも、俺なら大丈夫ですよ?」 「お前は、信用ならないからな」 「その状態じゃ、信用できません」  柊翔とおばさんに声をそろえて言われてしまう。その勢いに、俺のほうも何も言い返せない。 「……むぅ」  つい、拗ねたような顔で柊翔を見ていると、おばさんが何を思ったのか、にこにこしだしたかと思ったら、 「……要くん、面倒かもしれないけど、柊翔を泊まらせてもらってもいいかしら」  そんなことを言い出した。 「柊翔は信用できないけど、要くんなら、ちゃんと柊翔を勉強させてくれるかな、と思って」  ……俺、そんなに信用されるほどじゃないと思うんですが。特に、柊翔に関しては。 「それ、ひどくない?」  そう言いながら、ニヤニヤしてるし。 「いや、でも」 「おうちのことも心配なんでしょう?でも、おばさん、要くんが一人なのも心配なの。こんな柊翔でも、少しでも要くんの力になれるなら、一緒にいてもらうほうがいいかもしれないかなって」  やさしく言うおばさんの言葉に、胸の中が熱くなった。 「柊翔の予備校が終わってからだから、少し遅くなるかもしれないけど、それからでもいいかしら」 「……いいんですか?」 「この子、言いだしたら聞かないしね」  苦笑いしたおばさんに、ニッと笑い返す柊翔。 「わかってるじゃん」 「もう、諦めてますから」  そう言って笑うと、おばさんは席を立った。
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