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1.青空と"さよなら"と(14)
結局、月・水・金は柊翔の家に、火・木・土・日は俺の家、ということになった。週末はたまった家のことをやりたかったし、親父だって土日は家にいるだろう、ということで。平日だって、帰ってきているのかもしれないけど、ほとんど顔を合わせてないから、一人と同じようなもの。
こうして、柊翔と一緒にいられる時間ができただけ、俺は幸せなのかもしれない。このことは、おばさんから、おじさんへ、そして親父へと伝わったらしい。その日の夕飯を食べている間に、親父からメールで、連絡がきていた。
『鴻上さんのお宅で迷惑をかけないように』
俺が柊翔の部屋でスマホを見ていると、柊翔がのぞきこんできた。
「なんだって?」
「迷惑をかけるな、だそうです」
苦笑いしながら伝えると、
「要が迷惑なんかかけるわけねーっての」
そう言いながら、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「しかしなぁ」
そう言って、ベッドに座りながら、俺の腕をひっぱる。ストンと隣に座った俺のうなじに、柊翔が軽くキスをした。
「し、柊翔っ」
「ん。我慢するけど」
そう言いながら、ギュッと抱きしめる。
「……酷だよなぁ」
ボソリと、俺の肩に頭をのせて、つぶやいた。
「……じゃあ、やっぱり、帰ります?」
「ダメ!」
バッ!と顔をあげると、眉間にシワを寄せる。
「じゃあ、勉強の邪魔でしょうから、俺、リビングでおばさんと一緒にテレビ見てます」
「おい、要だって、勉強すればいいじゃん」
「……俺がいたら勉強にならないでしょ?柊翔のほうが」
クスクス笑いながら、柊翔の腕から逃れると、
「じゃ、勉強がんばってくださいね」
「要~!」
柊翔の情けない声を聞きながら、部屋のドアを静かに閉めた。リビングに行くと、おばさんから、新しい下着を渡されて、風呂に追い立てられた。
「寝間着は、柊翔に持って行かせるから、はいってらっしゃい」
こうしてみると、一人じゃないことを実感して、なんだか少しほっとしている。一人でいるって、楽な反面……寂しかったのかな。ゆっくりと湯船に顔を半分うずめながら、考えこんでしまう。
「……要、着替え、置いておくからな」
脱衣所に柊翔の影が、曇りガラス越しに見える。慌てて湯船から顔を出す。
「あ、はいっ。ありがとうございます」
「……ゆっくり温まれよ」
「……はい……」
柊翔の言葉に、十分、心は温まってるけどね。心の中で、そうつぶやいてる自分に、少し恥ずかしくなり、再び鼻までお湯に潜り込んでしまった。
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