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1.青空と"さよなら"と(16)
次の日は、俺一人で家に帰った。
「ただいま」
誰もいない家に、俺の声だけが虚しく響く。一日空けた家は、たった一日なのに、いつもと雰囲気が違う気がした。
……今日は、本当に柊翔が来てくれるんだろうか。
そんな不安と期待の中、俺は夕飯の準備を始めた。といっても、ご飯とみそ汁、それにおかずと言っても、野菜炒めくらい。帰り際にスーパーに寄って買ってきたものをしまい込もうと、冷蔵庫を開けた。案の定、ビールが数本入ってるだけ。俺よりも、親父のほうが大丈夫なんだろうか。
そんな心配をしながら、食材を冷蔵庫にしまい終えるとと、夕飯の準備を始めた。料理をし始めてしまえば、それに夢中になってしまって、親父からのメールが届いていたのに、気づかなかった。
出来上がった野菜炒めを大皿に盛りつけて、ラップをかぶせると、部屋の時計に目をやる。まだ少し時間があるかな、と、宿題をやるために自分の部屋に向かった。もう、柊翔から連絡来てるかな、と、スマホに目をやると、メールが一件だけ届いてた。
開いてみると、親父からで、『今日は泊まってくる』との内容。そんなに仕事が忙しいのかなぁ、と、昨日、鴻上のおじさんを見ているだけに、不思議に思ってしまう。
でも、今日は、柊翔と二人きりなんだ、ということに気づいて、急にドキドキしだした。
こ、これって、もしかして。
もしかしちゃうのかな。
だって、二人きりだし。
……どうしよう。
俺は、勉強どころじゃなくなってしまった。今更ながら、柊翔が着られるような服ってあったか、慌てて探しだしていると、スマホに柊翔からメッセージが届いた。
『予備校終わった。これから、行く』
柊翔が、来る。
そう思ったら、緊張からか身体が固まってしまった。
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