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1.青空と"さよなら"と(19)

* * *  風呂からあがって自分の部屋に戻ると、柊翔がスマホをいじりながら、ベッドに腰かけていた。 「柊翔?」  声をかけると、俺に気づいた柊翔が優しく微笑む。 「おいで」  そう言って手を伸ばした。  素直に柊翔の前に立つと、腰に手をまわしてギュッと抱きしめてきた。お腹のあたりに、柊翔の顔の熱を感じて、俺も柊翔の頭を抱きしめる。こうしていると、すごく安心しちゃうなぁ、と思っていたら、少しだけ冷たくなった柊翔の手が、上着の中に入り込み、ゆっくりと俺の背中を撫でだした。 「……ッ!」  思わず、ビクッと反応してしまった俺を、すごく熱のある潤んだ瞳で柊翔が見上げてきた。今まで、こんな風に見つめられたこと、あったかな。俺は魅せられたように、顔を近づけて、柊翔の唇に自分のそれを重ねていた。  少しずつ、少しずつ、ついばむようなキスだったのが、だんだん深いものに変わっていく。今までもキスはしてきたけれど、ここまで夢中にキスをしたのは初めてかもしれない。気が付けば、俺は、着ている物を脱がされて、ベッドに横たわっていた。  柊翔の大きくて、少しごつごつした手が、俺の脇腹を撫でるたびに、ゾクゾクして、声が漏れそうになる。じっと俺を見つめる柊翔の目が、俺の全てを見ているような気分にさせる。ただ、見られているだけなのに、こんなにも身体が切なくなるのは、なぜだろう。  唇がゆっくりと離れたかと思ったら、柊翔がギュウっと抱きしめてきた。 「……もう、止められなくなる。それでも、いいか?」  耳元で確かめるように言うけれど、もう止められないのは僕も同じ。柊翔の声だけでも切羽詰まってるっていうのが伝わってくる。  それに、俺だって、もう……覚悟はできてるから。 「いいよ……止めないで……」  柊翔の耳に唇をよせて、小さく囁く。それが柊翔の最後の理性を断ち切るきっかけになったのか。再び、互いを貪るようなキスをした。  俺たちは、その夜、初めてひとつになった。

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