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1.青空と"さよなら"と(24)
「獅子倉くん」
俺は、宇野さんと共に、車に乗っていた。
隣に座った宇野さんは、俺が泣き止むのを待って声をかけてきた。
「……」
「これから、どうしたいですか?」
これから先のことなんて、まったく考えられない。少なくとも、今は。
「鴻上くんには知らせますか?」
「……ダ、ダメですっ……」
「……」
「柊翔は……柊翔は、今日は模試を受けてて……」
「……わかりました。それじゃ……家に帰りますか?」
あの家に帰れば、また親父のことを思い出してしまう。
あの人は、家に帰ってくるんだろうか。
いや、きっと、あの女のところに行くに違いない。
思わず、唇を強く噛みしめた。
「……」
何も答えないでいると、しばらくして宇野さんは、運転手に小さな声で行き先を告げた。
もう、どうでもいい気分になっていた。
本当なら。
柊翔にそばにいて欲しい。柊翔に抱きしめて欲しい。柊翔に慰めて欲しい。
……そんな思いを、俺は胸の中に閉じ込めた。
こんなぐちゃぐちゃな俺を、柊翔には知って欲しくなかった。
宇野さんは、何も言わずに、ずっと俺の隣に座っていた。
空はあんなに青くて、綺麗に澄んでいるのに、今の俺は、まっ黒な思いでいっぱいになってしまってる。俺は、変わっていく景色を、ただ見つめるしかなかった。
そして、俺は、あの家に帰ることはなかった。
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