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2.恋しくて、恋しくて(9)

 文化祭当日は、見事な快晴で、ずっとモヤモヤと燻っていた気持ちも、少しだけ軽くなるような、そんな青空が広がっていた。  俺は、準備段階はほとんど何も手伝えなかったし、面白画像も出せなかったし、と、散々な状況だったので、当日はできるだけ、みんなが見て回れるようにと、店番?をすると、自ら志願した。 「獅子倉くん、そんなに気にしなくてもいいのに」  東海林が俺と一緒に、教室で店番をしている。  クラスでは騒々しい女子というイメージしかなかったけど、こうして入口に二人で並んで座ってると、そんなに話すこともなく、意外に静かだったりする。 「ん、でも、やっぱね」  ニコっと笑うと、東海林の頬が赤くなって顔を背ける。 「……どうかした?」  不思議に思って、顔をのぞきこむ。 「獅子倉くん……最近、かっこよくなったよね」  恥ずかしそうに俯きながら言う東海林に、俺の方がびっくりした。 「そ、そう?」  自分では、全然ピンとこないし、女の子から言われて、なんだか、こっちのほうが恥ずかしい。 「う、うん……なんか、背も少し伸びた?なんだか、色っぽくなった気がして」 『色っぽくなった』  その言葉に、ちょっとだけ、ドキッとする。 「い、色っぽいって……」 「いや、あの、ちょっとね。女子のみんなで言ってたのっ。」 「み、みんなって……」  クラスの女子に、どんな目で見られてるのか、と、今さらながらに戸惑ってしまう。 「もしかして、彼女でもできたのかなって」 「えっ」 「学校では、そんな風に見えないから、別の学校にでもいるのかも、なんて、みんなで話してたんだ」 「か、彼女なんかいないよ」 ……彼氏はいるけど。 「そうなの!?」  隣に座ってたのに、思い切り身体を向けてくるから、びびって身体をそらしてしまう。 「う、うん……」  そう答えただけなのに、目がキラキラしだして……か、顔が近いんだけど。  すごく。すごく、居心地が悪くなりつつあった俺に、神の助けが舞い降りた。 「獅子倉く~ん♪」  入口に現れたのは、朝倉先輩と一宮先輩だった。先輩たちは、制服ではなくて……コスプレ? 「せ、先輩たち……すごい格好ですね……?」  二人は、たぶん、アニメのキャラクターだよな。月に変わって、なんちゃらとか、いうセリフのある……。 「うふ。似合うでしょ?」  スラッとした長い足を、これ見よがしに俺に見せる朝倉先輩に、少し呆れ顔の一宮先輩。  この二人の迫力に、東海林はぽかーんとしてる。もしかして、助かったかも。

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