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2.恋しくて、恋しくて(11)

 ぽわんとした表情の東海林と、名残惜しそうな朝倉先輩を残して、俺は一宮先輩とともに、柊翔の教室に向かった。  時々、男女ともに、振り返られて見られているのは、確実に一宮先輩だと思う。 「……一宮先輩、似合いますね。その格好」  一緒に俺なんかが歩いちゃって、申し訳ないなぁ、と思いながら言うと、 「でしょ?遼子と一緒だと完璧だと思うのよね」  ウフフと笑いながらも、どんどん歩いてく。 「そうだ!」  なんだか面白いことを思いついた、という顔で、俺の腕に、一宮先輩の腕が絡みつく。 「な、なにしてんですかっ!?」  慌てて、腕を抜こうとすると、 「こういう時に、予防線張っとく方がいいでしょ?」  ニコリと笑う一宮先輩は……うん……やっぱり美人で、俺もさすがに照れくさくなる。 「お互いのためにね。」  そう言いながら……む、胸が腕に当たってます……。  柊翔の教室に近づくにつれ、なんだか、色んな叫び声が聞こえてくる。その半分は、黄色い叫び声……な気がするんだけど。そして、女子たちの塊が廊下を埋め尽くしていて前に進めない。 「……どうなってるんですか?」 「たぶん、朝倉先輩と鴻上先輩の客寄せ効果だと思うんだけど……」 「客寄せって、これじゃ、肝心のお化け屋敷に入れないんじゃ?」  前に進めなくなってしまって、二人で立ち止まっていると。 「お?要?」  女子の塊の向こう側に、柊翔の顔が見えた。そして、まさにモーゼの海割りのごとく、ささーっと道ができて、俺たちのほうに現れたのは。  ……ドラキュラ伯爵? 「あの……お化け屋敷でしたよね?」  どう見ても、『お化け』には、見えない。 「そのはずだったんだけどさ」  苦笑いしている柊翔。その後ろから現れたのは、オオカミ男?の、朝倉先輩。 「よぉ。なんだ、遥ちゃんと一緒に来たのか」  オオカミ男というよりかは、ハリウッドのSF映画に出てくるミュータントみたい。俺たちの目の前に来ても、周りの女子たちは、スマホを持って撮りだしてるし。  まぁ……かなりカッコイイんだけどさ。 「遼子は、今、お留守番です」 「へぇ。で、今は、獅子倉とデート中?」 「デ、デートだなんてっ」  俺がわたわたしてると、 「そうでーす♪」  とか言って、一宮先輩がべったりくっついてくるっ!  ま、マジで勘弁してっ!目の前の柊翔の目が……目が……笑ってないですっ。 「さ、よかったら、入ってってよ。」  そう言って、空いている方の腕を取ったのは朝倉先輩で。 「いや、あの、えとっ」  そう言っている間に、入口まで連れてこられた。 「はーい、お客さんですよ~!」  目の前には、白い着物を着て、おそらく幽霊のつもり、の受付の人が無言で入口を指さした。 「えっ?」  戸惑っているうちに、トンと背中を押されてた。

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