35 / 95
2.恋しくて、恋しくて(11)
ぽわんとした表情の東海林と、名残惜しそうな朝倉先輩を残して、俺は一宮先輩とともに、柊翔の教室に向かった。
時々、男女ともに、振り返られて見られているのは、確実に一宮先輩だと思う。
「……一宮先輩、似合いますね。その格好」
一緒に俺なんかが歩いちゃって、申し訳ないなぁ、と思いながら言うと、
「でしょ?遼子と一緒だと完璧だと思うのよね」
ウフフと笑いながらも、どんどん歩いてく。
「そうだ!」
なんだか面白いことを思いついた、という顔で、俺の腕に、一宮先輩の腕が絡みつく。
「な、なにしてんですかっ!?」
慌てて、腕を抜こうとすると、
「こういう時に、予防線張っとく方がいいでしょ?」
ニコリと笑う一宮先輩は……うん……やっぱり美人で、俺もさすがに照れくさくなる。
「お互いのためにね。」
そう言いながら……む、胸が腕に当たってます……。
柊翔の教室に近づくにつれ、なんだか、色んな叫び声が聞こえてくる。その半分は、黄色い叫び声……な気がするんだけど。そして、女子たちの塊が廊下を埋め尽くしていて前に進めない。
「……どうなってるんですか?」
「たぶん、朝倉先輩と鴻上先輩の客寄せ効果だと思うんだけど……」
「客寄せって、これじゃ、肝心のお化け屋敷に入れないんじゃ?」
前に進めなくなってしまって、二人で立ち止まっていると。
「お?要?」
女子の塊の向こう側に、柊翔の顔が見えた。そして、まさにモーゼの海割りのごとく、ささーっと道ができて、俺たちのほうに現れたのは。
……ドラキュラ伯爵?
「あの……お化け屋敷でしたよね?」
どう見ても、『お化け』には、見えない。
「そのはずだったんだけどさ」
苦笑いしている柊翔。その後ろから現れたのは、オオカミ男?の、朝倉先輩。
「よぉ。なんだ、遥ちゃんと一緒に来たのか」
オオカミ男というよりかは、ハリウッドのSF映画に出てくるミュータントみたい。俺たちの目の前に来ても、周りの女子たちは、スマホを持って撮りだしてるし。
まぁ……かなりカッコイイんだけどさ。
「遼子は、今、お留守番です」
「へぇ。で、今は、獅子倉とデート中?」
「デ、デートだなんてっ」
俺がわたわたしてると、
「そうでーす♪」
とか言って、一宮先輩がべったりくっついてくるっ!
ま、マジで勘弁してっ!目の前の柊翔の目が……目が……笑ってないですっ。
「さ、よかったら、入ってってよ。」
そう言って、空いている方の腕を取ったのは朝倉先輩で。
「いや、あの、えとっ」
そう言っている間に、入口まで連れてこられた。
「はーい、お客さんですよ~!」
目の前には、白い着物を着て、おそらく幽霊のつもり、の受付の人が無言で入口を指さした。
「えっ?」
戸惑っているうちに、トンと背中を押されてた。
ともだちにシェアしよう!