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3.二人だけのクリスマス?(1)

 親父と会ってから、しばらくして、宇野さんから連絡があった。  あの日は、ほとんど話にならなかった俺たちの代わりに、宇野さんが細々とした話をしてくれたらしい。  ――ああ、また、お世話になってしまった  そう思うと、申し訳なさに胸が苦しくなる。本当に、どうやってこの恩を返せばいいんだろう、と、思ってしまう。  宇野さんの話によると、どうも母親の保険金が、思ったよりも貰えたらしく、親父はそれを俺の生活費として、毎月、俺の口座に振り込んでくれるらしい。そしてやっぱり、というか、案の定、あの家は売りに出すらしく、そのお金も一部は俺に、という話をしているらしい。親父にしてみれば初めての持ち家で、住んだ期間は短いながらも、俺にとっても思い入れがある家だったけど。  なんにせよ、生きていくには金がいる。  少なくとも、俺が働き始めるまでは、親父の世話になるしかない。 「あの家を売っちゃうなら……母さんの仏壇はどうなるんだ……」  元気だった頃に撮った笑顔の母親の写真が置かれている、小さな小さな仏壇。  あの親父が、新しい家に、それを持って行く姿が思い浮かばなかった。   それに、あの女が許すのか。俺の頭の中に浮かぶのは、小さい子供を抱きかかえながら、俺のことを怖い者でも見るように見ていた姿。まるで、俺の方が悪いみたいに見つめる姿を思い出しただけでも、今でも拳を握りしめてしまう。  もし、あの女が許したとしても、俺の方が許せない、そう思った。 「あれ……俺が引き取れないかな……」  今の部屋は、ほとんど備え付けの家具だけで、俺自身の荷物は着替えぐらい。  家にある俺の荷物、早いところ引き取らないといけないんだけど、あの家に行く勇気がない。この前だって、柊翔に行ってきてもらってしまったし。  一人、広いこの部屋のソファに寝転んで天井を見上げる。 「いつまでも、この部屋っていうわけにもいかないよな」  だいたい、俺が一人で住むには広すぎるし、モデルルームにでも住んでいるようで、正直、落ち着かない。その上、亮平に世話になってる、という思いがやっぱり、ひっかかってる。 「……宇野さんに、一度、相談してみるか」  俺はテーブルに置きっぱなしだった携帯に手を伸ばした。
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