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3.二人だけのクリスマス?(4)

 クリスマスソングが耳に残りはじめる12月。駅からの道すがらに、何度も聞こえて、すりこまれてしまってる。  学校から戻った俺は、新しい部屋の玄関を開ける。誰も待っていないこの部屋には、まだ、慣れない。明かりをつけて荷物を置くと、部屋の奥に置いてある仏壇の前に座り、母親の写真に「ただいま」とつぶやく。  引越作業は、あっという間に終わった。宇野さんと坂入さん、そして亮平も手伝いに来た。当然、柊翔もいて、二人はなんとなく微妙な雰囲気だったけれど、最後には、ぎこちないながらも笑顔があったと思う。  そういう俺も、亮平とはうまく話せなかったけど、少しだけ、本当にほんの少しだけ、一緒にいても辛くはないかな、と思えるようにはなった気がする。  実家にいたときも、ほとんど一人だったのに、今のほうが部屋にいるのが寂しいと感じる。誰かが帰ってくると思って待ってる一人のほうが、まだ、寂しくなかった、ということか。  部屋に一人でいる時間が、苦痛になるとは思ってもいなかった。きっと、柊翔がいたら、こんなに寂しく感じないのかもしれない。  帰り際、駅に置いてあるアルバイト募集のフリーペーパーをもらってきたので、学校で出された課題を終えると、それを開いて、真面目にバイト探そうか、と考えだす。  もうすぐ、クリスマスだし、柊翔にも、何かプレゼントを用意したい。高校生のバイト代じゃ、買えるものもたかがしれてるかもしれないけど。そもそも、これから働いても、たいした金額にならないか。 「う~ん。参ったなぁ」  パラパラとめくっていくけど、なかなか、これだ、というのが見つけられない。そんな中、ある求人が目についた。 「……あ」 『高校生可 / シフト自由 / まかない有り / 週払い可』  俺にとっては理想的な条件。ちょうど、学校から帰る電車の途中駅にあるステーキハウス。 「……いいかも」  とりあえず、応募だけでもしてみようかと、スマホをとりだし、Webからの応募のページを探す。必要事項を入力しおえて、送信ボタンをドキドキしながら押した。  夏休みの旅館で働いた時以来の、アルバイト。あの時は、柊翔も、それに朝倉先輩たちも一緒だったけど、今回は、初めて一人で働く。ちゃんとやれるか、今から心配になってる俺。  あ、柊翔に相談もしてないや。でも、プレゼントを買うことを考えたら、柊翔には秘密にしておいたほうがいいかな。  まだ採用が決まってもいないのに、何をプレゼントしようか、とワクワクしながら、夕飯の準備を始める俺だった。

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