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3.二人だけのクリスマス?(12)

 注文を受けて、にこやかに奥の方に去っていく要の後ろ姿を目で追う。その要のそばに、一人の男が近寄っていく。声をかけられたのか、要は笑顔で何か話をしているようだ。 「あら。あの人」  俺と同じように要のことを見ていた母親が、驚いたような声を出す。 「なんだか、あんたに少し似てない?」  言われなくても、俺も少しそう思った。俺より少しだけ背が高そうだけど、見た目は自分でも似ている気がする。 「あの人のほうが、少し大人っぽいかしら」  なかなかのイケメンね♪、なんて、親父の目の前で言い放つ母親。それ、息子のこと、イケメンって言ってるのと同じじゃねぇの?自分の母親ながら、恥ずかしくなる。 「あ、あれ?もしかして鴻上先輩ですか?」  いきなり、要と同じような格好をした、少し明るい茶髪のショートカットの女子が、俺に声をかけてきた。他のテーブルから戻る途中なのか、トレーを抱えながら、俺の脇に立っている。 「えーと?」  目の前にいる女子に見覚えはなくて、どうリアクションをすればいいのか困ってしまう。 「あ、すみませんっ。私、同じ高校の二年で境サカイって言います。ここ、うちの親の店なんです」  親し気にニコニコと話してくる彼女は、この時期でも、肌が小麦色に焼けている。運動部か何かに入っているんだろうか。 「あ、そうなんだ」  それ以上に反応のしようもなく、無難に笑顔で答える。 「もう、注文は?」 「ああ、獅子倉くんが聞いてったよ」 「え?鴻上先輩って、獅子倉くんの知り合いなんですか?」 「ああ、幼馴染。今日は、あいつの様子を見に来たんだ」  そう言って、うちの両親のほうに視線を向ける。 「あ、そうなんですねっ。お邪魔しましたっ」  二人から笑顔で会釈をされたものだから、境のほうも慌てて挨拶すると、奥の方に戻っていった。 「……あんた、意外に人気者なのね?」  ニヤリと笑う母親の顔に、なんか、余計なコトを、やりそうで怖くなった。  少し時間はかかったものの、出された料理は、思ってた以上に旨かった。母親も父親も大満足て、父親のほうは、ビールを旨そうに飲んでいた。久しぶりに家族一緒に来てよかったと思う。  それに、時々見える、要が働いてる姿も、俺にはいいスパイスになった。目が合うたびに、ニコッと笑う要がかわいくて、俺もついついにやけてしまう。 「要くん、楽しそうに仕事してるわね」  俺同様に、母親も安心したような顔で、要のことを見ている。 「ここなら、また皆で食べに来てもいいかもな」  顔を赤くしながら、ジョッキのビールを飲み干す親父。  要が楽しそうなら、俺もそう思う。チラッと見えた要の顔が、なんだか恥ずかしそうな顔をしているように見える。その相手は……さっき俺に似ていると思った奴。  相手の男も、満更ではない顔をしていないか?俺の中で、少しばかり、嫌な予感がした。俺は、誰も気が付かないくらい小さいため息をついた。要の周りは、なかなか、俺を安心させてはくれないらしい。

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