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3.二人だけのクリスマス?(19)

 クリスマスイブは、一緒に過ごしたい。付き合いだして初めてのクリスマスイブ。暗い考えを拭えずにいたけれど、イブのことを考えて、なんとか、しのいできたんだけど。 「ほら、獅子倉行くぞ~!」  なんでか知らないけど、クラスのやつらに捕まって、「彼女・彼氏のいないメンツでカラオケパーティーやるぞっ」と、連れてこられて、現在にいたる。 「だから、付き合ってる人いるっていうのにっ」  ブツブツ文句を言いながら、部屋の奥の方に押し込められている俺。 「俺たちに、紹介できない時点でアウト」  俺と柊翔のことを知ってるのは、ヤスと佐合さんだけで、そりゃ、紹介なんてできるわけもなくて。そもそも、お前ら、俺とそんなに仲がいいわけでもねーだろ? 「つーか、お前にいるわけないっつーの。お前にいるくらいなら、俺にだっているわ」  クラスのやつらも、悪気がないのかもしれないけど、冗談っぽく言われても、なんだか傷つくんですけど。 「獅子倉くんは、何飲む~?」  せっかく、柊翔にプレゼントを用意して、渡すつもりでバックにもいれてきてたのに。 「ねぇ、聞いてる?」  目の前に、クラスの女子が顔をのぞきこんできた。 「あ、ごめっ、えと、コーラで」 「はーい、了解~!」  柊翔に連絡する暇もなく連れてこられて、柊翔のことが心配になってくる。 「わりぃ、ちょっとトイレ」  制服のポケットにスマホがあるのを確認して、部屋を出て行こうとすると、「獅子倉、逃げんなよ~」と言って、俺のバックを抱きかかえられてしまってる。 「わーったよ」  イラつきながら部屋を出ると、とりあえずトイレに逃げ込んだ。スマホを見ると、いくつかのメッセージが届いていて、一番最新のメッセージが、佐合さん。 『ごめんね。みんなに捕まっちゃった?』  ヤスと佐合さんが、たまたま先生に呼ばれていなかった隙に、俺が捕まっただけで、彼女たちが悪いわけではない。 『キリのいいとこで、抜け出せよ』  ヤスも心配そうな顔をした変なキャラクターのスタンプまで送ってきてた。 「フフフッ」  思わず、笑いがこぼれる。 『うまく抜け出せられるように、祈ってて。メリークリスマス!』  そして、肝心の柊翔からのメッセージが、当然のごとく、山ほど来ている。嬉しい反面、やりすぎだっての、と、呆れてしまう。でも、俺って、愛されてるかも、とか思って、にやけてしまう。 『クラスのやつらに拉致られて、カラオケ来てます。タイミング見て抜けます』  画面にメッセージを表示したのを確認すると、そのまま、ポケットに戻した。

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