61 / 95
3.二人だけのクリスマス?(19)
クリスマスイブは、一緒に過ごしたい。付き合いだして初めてのクリスマスイブ。暗い考えを拭えずにいたけれど、イブのことを考えて、なんとか、しのいできたんだけど。
「ほら、獅子倉行くぞ~!」
なんでか知らないけど、クラスのやつらに捕まって、「彼女・彼氏のいないメンツでカラオケパーティーやるぞっ」と、連れてこられて、現在にいたる。
「だから、付き合ってる人いるっていうのにっ」
ブツブツ文句を言いながら、部屋の奥の方に押し込められている俺。
「俺たちに、紹介できない時点でアウト」
俺と柊翔のことを知ってるのは、ヤスと佐合さんだけで、そりゃ、紹介なんてできるわけもなくて。そもそも、お前ら、俺とそんなに仲がいいわけでもねーだろ?
「つーか、お前にいるわけないっつーの。お前にいるくらいなら、俺にだっているわ」
クラスのやつらも、悪気がないのかもしれないけど、冗談っぽく言われても、なんだか傷つくんですけど。
「獅子倉くんは、何飲む~?」
せっかく、柊翔にプレゼントを用意して、渡すつもりでバックにもいれてきてたのに。
「ねぇ、聞いてる?」
目の前に、クラスの女子が顔をのぞきこんできた。
「あ、ごめっ、えと、コーラで」
「はーい、了解~!」
柊翔に連絡する暇もなく連れてこられて、柊翔のことが心配になってくる。
「わりぃ、ちょっとトイレ」
制服のポケットにスマホがあるのを確認して、部屋を出て行こうとすると、「獅子倉、逃げんなよ~」と言って、俺のバックを抱きかかえられてしまってる。
「わーったよ」
イラつきながら部屋を出ると、とりあえずトイレに逃げ込んだ。スマホを見ると、いくつかのメッセージが届いていて、一番最新のメッセージが、佐合さん。
『ごめんね。みんなに捕まっちゃった?』
ヤスと佐合さんが、たまたま先生に呼ばれていなかった隙に、俺が捕まっただけで、彼女たちが悪いわけではない。
『キリのいいとこで、抜け出せよ』
ヤスも心配そうな顔をした変なキャラクターのスタンプまで送ってきてた。
「フフフッ」
思わず、笑いがこぼれる。
『うまく抜け出せられるように、祈ってて。メリークリスマス!』
そして、肝心の柊翔からのメッセージが、当然のごとく、山ほど来ている。嬉しい反面、やりすぎだっての、と、呆れてしまう。でも、俺って、愛されてるかも、とか思って、にやけてしまう。
『クラスのやつらに拉致られて、カラオケ来てます。タイミング見て抜けます』
画面にメッセージを表示したのを確認すると、そのまま、ポケットに戻した。
ともだちにシェアしよう!