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3.二人だけのクリスマス?(23)
「おいっ、何やってんだっ!」
また別の男の声がする。俺はただ恐怖で、目の前に誰がいるかなんて、考えられなくて、意識を手放しそうになった。
「要っ!?」
新たな声の主が、俺を抱えてた男を突き飛ばした。
「うわっ!?」
男は尻餅をついても、すぐに立ち上がった。
「何すんだよっ!?」
「それは、こっちのセリフだっ。」
俺は新たな声の主に抱きかかえられた。
「要、大丈夫か!?」
この声は……。
「り、亮平……?」
目の前の男のコートに、ギュッとしがみつく。
「ああ、俺だよ」
亮平が、俺を抱きかかえて、ちゃんと立たせようとした。
「……あ、ありがっ、とっ」
相手が亮平だというのに、俺は思わず涙が出そうになっている。
「チッ!」
男は、舌打ちをすると、
「……カナメくん、またね」
冷たい声でそれだけ言うと、去っていった。
その場で、俺は、何度も深呼吸した。
「……大丈夫か?」
目の前に立つ亮平につかまりながら、ようやっと落ち着いてきた。
「……うん」
大きくため息をついて、ようやく亮平の顔をまともに見ることができた。
柊翔よりも少しだけ背の高い亮平。黒のロングコートのせいなのか、まとっている香水の香りのせいなのか、俺が知ってる亮平よりも、少し大人びて見えた。
「……どうして、ここに?」
あいつから助けてもらったせいなのか、今までよりも、ずっと、恐怖を感じることなく、話しかけることができていることに気づく。
「ちょうど、こっちで親父の会社のクリスマスパーティーがあったんだ」
近くのホテルでパーティーをしてたらしく、そこを抜け出して来たらしい。
「ちょっとだけ、お前の顔、見られたらと思って」
心配そうな顔で俺の顔を見つめる亮平は、少しだけ言い訳をしているように見える。
「宇野に車で送ってもらって。今も近くで待ってるはず」
「え。じゃあ、早く戻った方がいいんじゃないの?」
「……大丈夫。少しくらい、待ってくれる」
そうは言われても、宇野さんを待たせてることのほうが、気になる俺。
「と、とにかく、助けてくれてありがとう」
「ああ。あいつ、知り合いなのか?」
「……近所のコンビニの人」
「!?……その程度の知り合いなら、蹴っ飛ばしてでも逃げればよかっただろうに」
眉間にシワをよせると、怒ったように言う亮平。
「なんか、柊翔の知り合いみたいだったから……」
「ったく。そんなの関係ねーだろ。お前に何かあったら、柊翔だって、心配するだけじゃ、すまねーんだから」
「……うん」
「まぁ、大事がなくてよかったけどよ」
そう言うと、俺の頭をポンと手をのせる。
「……メッセージ、嬉しかった」
「……ん?」
「ケーキの画像」
「……」
「また、送ってくれよ」
「……うん」
俺の頭をなでると、満足そうに微笑む亮平。
「今日は会えてよかった」
「……うん」
「今年はもう会うこともないだろうけど……また、会えたらいいな」
そんな切なそうな顔で、見ないでくれ。
「……何かあったら、宇野にでも頼れよ」
『じゃあな』と言って去っていく亮平を、俺はただ見送ることしかできなかった。
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