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3.二人だけのクリスマス?(24)

 真っ暗な部屋に戻ると、へなへなとしゃがみこむ。今頃になって、さっきの恐怖がぶり返している。  あの時、亮平が来てくれなかったら、それを思うと、怖くなる。震えるのを抑えようと、膝を抱えながら自分自身を抱きしめるけど、そんなんじゃ、震えは止まらない。 「柊翔……助けて……」  明かりも点けず、顔を伏せたまま。じっと座っていた。時間がどれくらい経ったのか。  ピンポーン、と、玄関のチャイムが鳴ると同時に、ピクリと、肩を揺らす。 『要、俺』  小さく聞こえてきたのは、柊翔の声。すぐさま、立ち上がって、玄関のドアを開けると、目の前には、息をきらせた柊翔が、心配そうな顔で立っていた。 「要、大丈夫っ……!?」  柊翔が言い終わらないうちに、玄関の中に引っ張り込んで抱きしめた。ただ、無言で、柊翔に抱き付いて、柊翔の匂いを、胸いっぱいに吸い込んで、ようやく、安心した気分になれた。 「要……」 「来てくれて、ありがとっ」  ギュウッと抱きしめてくれる柊翔。その力強さに、大丈夫、という気持ちが湧いてくる。 「亮平から連絡来て」  その言葉で、身体が震える。 「ごめんなっ」  柊翔が背中を撫でてくれるだけで、さっきの恐怖が流されていくみたい。 「ケーキの画像見て、一緒に食べてやれないのが、悔しくて……すぐに抜け出して来た」  なんだか、イライラしている柊翔が想像できてしまって、腕の中で思わず笑みがこぼれる。 「電車の中で、亮平からメッセージ来たから、駅に着いてから猛ダッシュで来たんだ」  顔を上げてみれば、こんなに寒い時期なのに、柊翔の額には汗がにじんでいる。真剣な眼差しに、胸の奥がジンっと熱くなる。 「来てくれたから」  すごく急いで来てくれたのが、わかるから。 「……それだけで、嬉しいよ」  柊翔の優しい匂いが、俺を包んでくれる。 「要、あがってもいい?」  そう言われて、玄関で抱きしめ合ってたことに気づいて、慌てて離れる。 「あ、う、うん。で、電気つけなきゃね」  真っ暗な中だったのを今更思い出して、部屋の灯りをつけた。 「柊翔は、ご飯は食べたの?」 「ああ、飯っていうか、ハンバーガー食ってきた。駅前で要のこと待ってようとしたらさ。クラスの奴らに見つかっちゃって」  柊翔も、俺と同じで、『彼女なし』認定されて、拉致られてたらしい。 「そっか。あ、ケーキ食べてないの?もしかして」 「さすがに、男だけで、ケーキは食わないわな」  笑いながらコートを脱ぐ姿を見て、自分もコートを着たままだったことに気づいて、急いで脱いだ。

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